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2024.08.09
初めての方でも簡単。1時間で出来るシンプルな経営計画の作り方(フォーマット付き)
税理士法人AOIみらい CEOの杉山です。
今回の記事では、『初めてでもできる、経営計画の作り方』についてお話します。
仕事柄、経営者様向けに経営計画についてお話する機会が多いのですが、
「経営計画書の作成は、複雑で時間がかかる」
「自分には、細かく作り込むのは難しいのではないか」
とお考えの方が多い印象です。
『計画』という言葉が、エクセルやシステムで厳密に作らないといけない、時間をかけて作り込まないといけないと思わせるのかもしれません。
最初から月単位で商品ごと・部署ごとに計画を作ったり、採用計画も織り込もうとして、時間もかかり、全体の整合性が取れなくなってしまった。その結果、時間が足りなくなって作成を断念した。こんな経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。
初めて経営計画書を作る方は、まずはざっくりとした計画で十分です。そこから段階を踏んで細かく作り込んでいけばよいのです。
重要なのは、『計画』という言葉に過度にとらわれないこと。『計画を作る』というより『予測を立てる』感覚で、来期1年間はどうなりそうか?どうしたいか?をアウトプットすることからスタートするのをオススメします。
経営計画書が必要な理由
「経営計画書って本当に必要なの?」と思われる経営者の方も多いのではないでしょうか。
結論から言えば、経営計画書は会社の成長と安定に欠かせません。経営計画書は会社の羅針盤のような役割を果たします。目指すべき方向性を明確にし、そこに至るまでの道筋を示してくれるのです。
社内のコミュニケーションツールとしても重要です。経営者の考えを全社員と共有することで、会社全体が一丸となって目標に向かって進むことができます。社員一人一人が自分の役割を理解し、モチベーション高く仕事に取り組めるようになるのです。
さらに、経営計画書は会社の健康診断書のような役割も果たします。定期的に計画と実績の比較をすることで、課題や問題点の早期発見に繋がります。
また、経営計画書は対外的な信用力向上にも繋がります。銀行や取引先に提示することで、会社の将来性や安定性をアピールできます。特に融資を受ける際には、経営計画書の存在が大きな後押しとなるでしょう。
初めてでもできる、経営計画書の作り方
初めて作成するときには、月次の詳細計画は不要です。前期1年分の売上・原価・経費・利益・税金 それぞれの合計額があれば十分です。特に決算前であれば、9ヶ月分の実績と残り3ヶ月の見込みがあるため、より精度の高い予測が可能です。
簡単なフォーマットを用意しましたので、ダウンロードしてご利用ください。
では、具体例をフォーマットの「①利益計画(詳細版)」に入れてみましょう。
前提
・借入金の残額:3,000万円
・年間売上:1億2,000万円
・売上原価率:40%
・経費率(人件費、通常経費含む):40%
・経常利益率:5%
前期実績の分析
まずは、前期の実績を入力しましょう。売上高、売上原価、人件費・その他経費・原価償却費、営業利益などの基本的な数値を1年分まとめて入力します。
決算確定前であれば予測数値でもかまいません。
来期目標の設定
目標を1つ記入しましょう。極端な例ですが、様々な選択肢を書き出すという意味で、この記事では「借入金3,000万円を全額返済する」という目標を設定します。
簡易予測の作成
来期の目標を達成するには(3,000万円返済するには)売上・原価・経費・利益はどのくらい必要か?を計算します。
3000万円返済するには3000万円のキャッシュが必要です。3000万円のキャッシュを生むには減価償却費を差し引いた2400万円の利益を残すには?という基準で計算しましょう。
仮に実効税率を35%とすると、経常利益は2400万円÷65%=3692万円です。内部費用・営業外収益・営業外費用は前期と変更なしとして粗利は8372万円、粗利益率はそのまま44%で割り戻すと売上は1億9千2万円で約1.58倍ということになります。
※表中央の「計画根拠メモ」は文字が小さいため、画像をクリックして拡大してご覧ください。
複数シナリオの検討
単純に売上が1.58倍になればよいのですが、自然増や経費を増やさずに達成するのはなかなか現実的ではありません。そこで複数のシナリオを検討します。
タイトル欄にシナリオ名を入力し、さまざまな数字を当てはめていきます。
例:
・借入金を約定どおり500万円返済する
・経常利益を10%増やす
・その他経費を10%削減する
・人を一人採用して売上を15%アップする
・粗利を10%増やす
最適シナリオの選択
シナリオは思いつく限りの可能性を作成してよいかと思います。作成したシナリオを吟味して、最も現実的で達成確率の高いものを選定します。
この簡易予測を通じて「原価低減の方策は?」「売上を増やすために営業担当を何人採用すればよいか?」といった具体的な検討事項が自然と浮かび上がってきます。
今までは「なかなか利益残らない」「売上が増えない」とぼんやりとした課題だったものが段々明確になり、「このシナリオなら頑張ればいけるかもしれない」という自信に変わってきます。
簡易予測でも多くの経営課題が明確になり、達成シナリオも見えてくるのです。
まとめ
経営計画の策定は、皆さんが想像するより難しいものではありません。まずは簡単な予測から着手し、段階を踏んで細かい計画を立てていきましょう。
弊社では、経営計画書を作成したことがない中小企業様向けにも、このような簡易的な来期予測の作成をサポートしています。1〜2時間程度のミーティングでも、多くの気づきを持ち帰っていただけると思います。
税務顧問契約のお客様はもちろん、財務セカンドオピニオンも対応しています。ぜひ税理士法人AOIみらい(東京都新宿区)にお気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
杉山 信也