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2024.09.03

【2028年10月開始】週10時間以上勤務で雇用保険適用に。中小企業が知っておくべき影響と対策

2024年5月の国会で、雇用保険の改正案が可決・成立しました。以下4項目について改正案が提示されています。

①雇用保険の適用拡大
②教育訓練やリ・スキリング支援の充実
③育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保
④その他雇用保険制度の見直し

この記事では、雇用保険の適用拡大について中小企業経営者の皆様が知っておくべきこと、改正案に対応する具体策を解説します。


雇用保険の適用拡大とは

2028年10月1日より、雇用保険の適用が拡大されます。

雇用保険の被保険者の要件のうち、1週間の所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に変更されます。これにより、育児休業給付金や失業給付などを受け取れる対象者が、パート・アルバイトなどの短時間労働者にも広まります。

拡大の背景には、働き方の多様化によりパート・アルバイトなどの短時間労働者・非正規雇用者が増加していることが挙げられます。これらの労働者にも雇用保険を適用し、育児休業給付金・失業給付を受け取れるようにすることで、雇用のセーフティーネット拡大を図ります。

なお、この改正により、新たに雇用保険に加入する被保険者数は最大500万人と見込まれています。

厚生労働省:雇用保険等の一部を改正する法律の概要(令和6年5月10日成立)から引用

1週間の所定労働時間とは

1週間の所定労働時間は、通常の週において労働者が勤務すべき時間を指します。企業が就業規則や労働契約で定めたものであり、法定労働時間の範囲内で設定されます。法定労働時間は、1日8時間、週40時間が上限です。

また、変形労働時間制を導入している企業では、週ごとの所定労働時間が一定でない場合があります。この場合、一定期間(1ヶ月、3ヶ月、1年)を単位として、平均的な週の労働時間が40時間以内になるように設定されます。

算定基準

雇用保険適用拡大に伴い、算定基準も以下の見直しが行われる予定です。

参考:厚生労働省:雇用保険等の一部を改正する法律の概要(令和6年5月10日成立)


中小企業への主な影響

雇用保険適用拡大に伴い、中小企業には以下のような影響が予想されます。事業を円滑に進めるためには制度変更による影響を正確に把握し、適切な対策を講じることが不可欠です。

雇用保険料負担の増加

適用範囲が拡大されることで、これまで雇用保険に加入していなかった短時間労働者も対象となり、企業の保険料負担は必然的に増加します。特に、パートタイムやアルバイトを多く雇用している中小企業にとっては、大きな負担となる可能性があります。

事務手続きの増加

新たに多くの労働者が雇用保険の対象となり、加入手続き、保険料の計算、給与明細の作成など、人事労務に関する事務作業が大幅に増えることが予想されます。

雇用管理の強化

労働時間や雇用形態の管理がより厳格化されます。特に、パートタイムやアルバイトなどの短時間労働者の労働時間を正確に把握し、適切に管理することが求められます。労働基準法違反のリスクを回避するためにも、タイムカードの導入や労働時間管理システムの導入などの検討も必要です。

労働者の意識の変化

雇用保険の適用拡大により、労働者の意識が変化する可能性も考えられます。

未加入者の中には、雇用保険の適用拡大によって失業給付や育児給付などのセーフティネットが利用できるようになることを歓迎する声がある一方で、保険料の負担増加を懸念する声もあるかもしれません。

企業としては、労働者とのコミュニケーションを密にし、安心して働ける環境づくりに取り組むことが重要です。


中小企業が取るべき対策

2028年の雇用保険適用拡大は、中小企業経営者にとって大きな課題となる一方で、新たなビジネスチャンスを生み出す可能性も秘めています。自社の状況を把握し、事前準備を行いましょう。ここではいくつかの対策例を紹介します。

現状の把握と分析

従業員属性の分析:
パート・アルバイト、契約社員など、従業員の属性別に労働時間を分析し、影響を受ける人数を把握しましょう。

雇用契約書の点検:
契約期間、労働時間、賃金体系など、雇用契約書の内容が新しい制度に合致しているか確認しましょう。

給与計算システムの機能確認:
現在のシステムで新しい保険料率や被保険者範囲に対応できるか、機能不足がないかを確認しましょう。

従業員への丁寧な説明

制度変更に伴い、従業員の不安や認識違いが生じる可能性があるため、丁寧な説明とコミュニケーションが重要です。

メリット・デメリットの両面の説明:
雇用保険に加入により失業給付・育児休業給付・介護休業給付などを受けられるメリットがあること、保険料負担が発生する(増える)デメリットを正確に伝えましょう。

個別相談窓口の設置:
従業員が疑問に思ったときに気軽に相談できる窓口を設けることで、安心して制度変更を受け入れられるようサポートしましょう。

よくある質問集の作成:
従業員が抱きやすい質問をまとめた資料を作成し、配布することで、効率的に情報を共有できます。

システムの見直しと導入

クラウド型システムの活用: クラウド型の労務管理システムは、導入コストを抑えつつ、最新の法改正に対応できる点が魅力です。

試用期間を設ける:
新しいシステムを導入する際は、事前に試用期間を設け、使い勝手や機能性を十分に評価しましょう。

既存システムとの連携:
既存のシステムとの連携性を考慮し、データ移行や操作性の変更にスムーズに対応できるように計画しましょう。

専門家への相談、連携

税理士・社会保険労務士への相談:
制度の解釈や手続きに関する専門的な知識を持つ税理士や社会保険労務士に相談することで、より確実な対応が可能になります。

労働組合との連携:
労働組合がある場合は、制度変更に関する情報を共有し意見交換を行うことで、円滑な導入を進めることができます。

助成金・補助金の活用

助成金・補助金の情報を収集: 政府や地方自治体が提供している助成金・補助金を積極的に活用することで、制度変更に伴う負担を軽減できます。助成金・補助金の申請手続きは複雑なため、専門のコンサルタントに依頼することも検討しましょう。


まとめ

2028年の雇用保険適用拡大は、中小企業への影響はあれど、多様な働き方を促進し人材育成の後押しに繋がります。

経営者・人事労務担当者は改正内容を理解し、従業員への丁寧な説明や手続きサポートを行うことで、従業員の定着と採用にも期待ができます。本記事で紹介した内容を参考に、自社に合った対策を準備しましょう。

弊社には社会保険労務士も在籍しています。今回の改正に伴う疑問や不安があれば、東京都新宿区の税理士法人AOIみらいにお気軽にご相談ください。

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