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2024.10.11

【2024年11月施行】フリーランス新法について解説。発注企業側の義務と対応策

2024年11月1日に、フリーランス新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されます。組織に所属せず個人で働くフリーランスが、安心して働ける環境整備のための法律です。

この新法では企業が守るべき義務が定められており、取引条件の明示・報酬の支払期限厳守・不当な言動への措置などが求められます。

この記事ではフリーランスと取引をしている企業経営者・担当者向けにフリーランス新法の概要・企業側(発注者側)の義務を中心に解説いたします。


フリーランス新法の対象者

フリーランス新法は、業務委託事業者(以下、発注事業者)と特定受託事業者(以下、フリーランス)のあいだの「業務委託契約」に係る取引に適用されます。

この法律において「特定受託事業者」とは、以下の2つに分けられます。

①個人事業主のフリーランス
従業員を一人も雇用しておらず、完全な個人事業主として活動するフリーランスの方々が当てはまります。システムエンジニア・Webデザイナー・クリエイター・カメラマンなど職種は多岐に渡ります。個人事業主であっても従業員を雇用している場合は対象外です。

※短時間・短期間で一時的に雇用される者は従業員に含みません。週労働20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる者が従業員に該当します。

②従業員のいない法人
法人格は有するものの、他の役員や従業員がおらず、1人で事業を行っている場合はフリーランス新法の対象です。また、発注事業者は「フリーランスに業務委託する事業者で、従業員を使用するもの」と定義されています。



特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)パンフレットから引用


フリーランス新法の背景

近年、働き方の多様化・価値観の変化により、フリーランスが増加しています。

フリーランスは労働基準法における「労働者」ではないので、働く場所・時間の自由度が高いのが特徴です。その一方で、労働関係法令が適用されず、労働時間や報酬に関する法的規制がないことから、不利な条件での契約締結、報酬支払いの遅延、一方的な契約打ち切りなどの問題も増加しています。

このような背景から、フリーランスが安心して働ける環境を整備するため、

①フリーランスと発注事業者間の取引の適正化
②フリーランスの就業環境整備

を目的として、フリーランス新法の施行に至りました。


フリーランス新法の内容と発注事業者の義務

フリーランス新法の規制内容は大きく2つに分類され、それぞれ義務や禁止事項などが定められています。

取引の適正化に係る規定
・取引条件の明示
・報酬の支払い期日
・特定業務委託事業者の遵守事項

就業環境の整備に係る規定
・募集情報の的確表示
・妊娠・出産・育児・介護と業務の両立に対する配慮
・ハラスメント対策に係る体制整備
・中途解除等の事前予告・理由開示

取引条件の明示

発注事業者は、フリーランスに業務委託する際に、取引条件を書面または電磁的方法で明示することが義務付けられます。フリーランス間の受発注であっても、本遵守事項は適用されます。

なお、発注時に各事項が未定の場合は、未定である理由や決定予定日を明示し、決定後すぐに書面もしくは電磁的方法で示すことが認められています。

明示項目は以下が予定されています。
・委託する業務の内容
・報酬の額
・報酬の支払期日
・業務委託事業者・フリーランスの名称
・業務委託をした日
・給付を受領する、もしくは役務の提供を受ける日
・給付を受領する、もしくは役務の提供を受ける場所
・検収完了日

報酬の支払い期日

フリーランス新法では、フリーランスが報酬の支払い遅延を受けないように、以下の支払い期日を定めています。業務委託が再委託である場合は、発注事業者が発注元から支払いを受けた日から、30日以内にできる限り早く支払いを完了すれば問題ありません。

報酬の支払い期日等
原則(委託事業者の義務) フリーランスから給付を受領した日(フリーランスが役務を提供した日)から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間内
支払い期日が定められなかった場合 給付を受領した日(役務を提供した日)
受領日から起算して60日より長い支払期限が定められた日 給付を受領した日(役務を提供した日)から60日を経過する日

発注事業者の遵守事項

長期間の業務委託がなされる場合、フリーランスが不利益を受けないように、発注事業者に対して以下の遵守事項が定められています。

・フリーランスの責めに帰すべき事由なく給付の受領拒否
・フリーランスの責めに帰すべき事由なく業務委託時に定めた報酬の減額
・フリーランスの責めに帰すべき事由のない返品
・通常の相場と比べて、著しく低い報酬額の不当な決定
・正当な理由のない発注事業者指定商品の購入、役務利用の強制
・発注事業者のために金銭、役務その他の経済上の利益提供の要請
・フリーランスの責めに帰すべき事由のない給付の内容変更・やり直しの要請

参考:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)パンフレット

なお、遵守事項の対象となる取引は「政令で定める期間以上の期間」とされています。政令で定める期間は今後検討される予定です。

募集情報の的確表示

発注事業者がフリーランスを募集する際、募集情報を的確に表示することが義務付けられます。表示事項は以下のとおりです。また、虚偽の表示や誤解を招く表示をしてはならず、情報を正確かつ最新に保つ必要があります。

・業務内容
・業務に従事する場所・期間・時間に関する事項
・報酬に関する事項
・契約の解除、不更新に関する事項
・フリーランスの募集を行う者に関する事項

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)パンフレットから引用

育児介護等と業務の両立に対する配慮義務

発注事業者は、6ヶ月以上業務を委託するフリーランスから申し出があった場合、妊娠・出産・育児・介護と業務を両立できるように、適切な配慮を行わなければなりません。6ヶ月未満の業務委託でない場合にも、同様に配慮するよう努力義務を負います。


・「子の急病により予定していた作業時間の確保が難しくなったため、納期を短期間繰り下げたい」との申出に対し、納期を変更する
・「介護のために特定の曜日についてはオンラインで就業したい」との申出に対し、一部業務をオンラインに切り替えられるよう調整する
・妊娠中、出産後に休業を取得できる

なお、やむを得ず必要な配慮を行うことができない場合には、配慮を行うことができない理由について説明することが必要です。

ハラスメント対策に係る体制整備

発注事業者は、セクハラ・マタハラ・パワハラなどのハラスメントにより、フリーランスの就業環境が害されることがないよう、相談対応の体制整備など必要な措置を講じる必要があります。

発注事業者が講ずべき措置
①ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化、周知・啓発
②相談に適切に対応するために必要な体制の整備
③ハラスメントが発生した場合の事後の迅速かつ適切な対応

中途解除等の事前予告・理由開示

発注事業者は、6ヶ月以上に渡って行う業務委託について、契約を中途解除・契約満了後に更新しない場合、原則として解除日又は契約満了日から30日以上前までにフリーランスに対してその旨を予告しなくてはなりません。

また、予告後にフリーランスから契約解除や契約不更新の理由の開示を求められた場合、原則としてその理由を遅滞なく開示する必要があります。

なお、以下に該当する場合は予告不要です。
①災害などのやむを得ない事由により予告が困難な場合
②特定受託事業者に再委託をした場合で、上流の事業者の契約解除などにより直ちに解除せざるを得ない場合
③業務委託の期間が30日以下など短期間である場合
④基本契約を締結している場合で、特定受託事業者の事情で相当な期間、個別契約が締結されていない場合
⑤特定受託事業者の責めに帰すべき事由がある場合


発注事業者への義務違反に関する罰則

フリーランス新法に違反する事実がある場合、フリーランスは本法律の所轄省庁(公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省)に対して申し出が可能です。

所轄省庁は申し出の内容に応じ、必要な調査を行い、申し出が事実の場合は発注事業者に対して指導・助言・勧告を行います。なお、命令違反や検査拒否などがあると50万円以下の罰金に処せられることもあります。

企業は、この罰則規定を十分に理解し、フリーランス新法のガイドラインを遵守することが求められます。


企業(発注事業者)が対応すべきこと

フリーランス保護新法の施行に伴い、企業(発注事業者)は迅速かつ適切な対応が求められます。以下の4点を中心に、施行日までに体制整備・書面確認等を行いましょう。

発注時の手順・契約書雛形を見直す

まず、取引条件の明示義務や報酬の支払い期限など、フリーランス新法の具体的な要件を満たすための内部プロセスの見直しが必要です。これには、契約書の改訂や支払い体制の整備が含まれます。

フリーランス新法では、取引条件の明示・支払期日における報酬支払いなどが義務付けられています。自社がフリーランスに発注するときの手順・発注書や契約書の雛形を確信し、フリーランス新法の規定に反している場合は必要に応じて修正しましょう。

フリーランス向けのハラスメント相談窓口などを設置する

フリーランス新法の施行後は、フリーランスに対しても従業員と同様に各種ハラスメントに関する相談窓口が必要です。単に窓口を設置するだけでなく、相談内容に応じた適切な対応ができる体制を整えましょう。専門の相談員を配置したり、外部の専門機関と連携することで、より効果的な相談体制を築くことができます。

募集時の掲載情報を正しく表示する

募集時の掲載情報は、フリーランスが仕事を選ぶ上で重要な判断材料です。報酬額・支払い条件・業務内容・契約期間などを正確に記載し、フリーランスが契約内容を正しく理解できるようにしましょう。特に、報酬については、時間単価や成果報酬など、具体的な計算方法を明記することで、トラブルを防ぐことができます。

社内外に周知する

フリーランス新法は、企業の全ての従業員が理解し、行動に移す必要がある重要な法律です。そのため、社内全体で法令遵守の意識を高めるための取り組みが不可欠です。

従業員に対しては定期的な研修を実施し、フリーランスとの取引における注意点や、ハラスメント防止に関する知識を習得させましょう。また、取引先企業に対しても、フリーランス新法の内容を周知し、共同で法令遵守に取り組む体制を構築することが望ましいです。

各所轄省庁から、パンフレット・特設サイトなどが公開されています。
こちらも併せて参照し、対策を整えましょう。

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