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2024.12.24

【速報】2025年度(令和7年度)税制改正大綱を解説

2024年(令和6年)12月20日に『令和7年度税制改正大綱』が発表されました。

税制改正大綱とは、各省庁から出される税制改正の要望などを受け、与党の税制調査会が中心となって翌年度以降の税制改正の方針をまとめるものです。

この記事では主要な改正項目を分かりやすく解説します。項目は順次追加・更新予定です(2024年12月30日更新)。

注意事項
※この内容は、2024年(令和6年)12月27日に閣議決定された「税制改正大綱」を元に更新しています。
※細かい基準・条件等はに財務省公式サイトに掲載されている「令和7年度 税制改正の大綱」「税制改正の大綱の概要」のPDFファイルにてご確認ください。

※税制改正大綱は方針を示すものであり、今後本記事とは異なる内容に変更される場合があります。


個人所得税

年収103万円の壁の見直し(基礎控除・給与所得控除の引き上げ)

所得税の控除額を引き上げ、いわゆる「103万円の壁」を123万円に引き上げる方針が示されました。国民民主党が、2024年10月に所得税控除額を103万円から178万円への引き上げを主張したことから、今回の見直しに至りました。

所得税控除額 引き上げの目的
・働き控えへの対応:いわゆる「103万円の壁」を引き上げることで、パート・アルバイト従業員の就業調整を防止し、労働供給を促進することを目指す
・所得減税による消費喚起:低所得層の手取りを増やすことで、消費を活性化し、経済成長につなげる
・インフレ対応:1995年からの最低賃金上昇率(1.73倍)に基づき、物価上昇に対応する

引き上げの概要
・給与所得控除の最低保障額を、55万円から65万円に引き上げ
・基礎控除を48万円から58万円に引き上げ(※合計所得金額が2,350万円以下の個人が対象)
・年末調整で対応するかたちで2025年(令和7年)から実施

特定扶養控除の要件引き上げ、特定親族特別控除の新設

19歳以上23歳未満の子を持つ親を対象とする特定扶養控除について、子の年収要件を引き上げる方針が示されました(特定親族特別控除の新設)。この改正により、大学生などのアルバイト収入が増えても、親が受けられる税制上の優遇措置が維持されます。

・対象者:19歳以上23歳未満の扶養親族を持つ納税者
・年収要件:103万円以下から150万円以下に引き上げ
・控除額:所得税63万円、住民税45万円(変更なし)
・目的:学生アルバイトなどの働き控えを防止し、若者の就労を促進
・適用開始時期:令和7年分


中小企業支援

中小企業者等の法人税率の特例の延長

現行の中小企業者等に対する法人税率の特例(年800万円以下の所得金額に対して15%の軽減税率)の適用期限を延長する案が検討されています。

中小企業者等を対象とした法人税の軽減税率の特例措置が2年間延長されます。ただし、所得が高い企業については優遇措置が縮小されます。

・適用期限:2026年度末(2027年(令和9年) 3月31日)まで延長
・軽減税率:年800万円以下の所得に対して15%
    ※本則19%、800万円を超える部分は通常の法人税率 23.2%
・対象:資本金1億円以下の中小法人等
   ※所得10億円超の企業は、税率を17%に引き上げ

中小企業投資促進税制の延長

中小企業者等が一定の設備投資を行った場合に、特別償却または税額控除を認める制度です。機械装置、測定工具、検査工具、一定のソフトウェア、貨物自動車、内航船舶などの設備投資を対象としており、中小企業の経営基盤強化や競争力向上を支援することを目的としています。

今回の税制改正により、2年間(2027年(令和9年) 3月31日まで)延長されます。

・適用期限:2026年度末(2027年(令和9年) 3月31日)まで延長
・対象:資本金1億円以下の中小企業者、農業協同組合、商店街振興組合等または従業員数1,000人以下の個人事業主
・優遇措置:特別償却30%または税額控除7%(資本金3,000万円以下の中小企業者等に限る)
・対象設備と金額要件:
     -機械及び装置:1台160万円以上
     -測定工具及び検査工具:1台120万円以上、または1台30万円以上かつ複数合計120万円以上
     -貨物自動車:車両総重量3.5t以上
     -内航船舶:取得価格の75%が対象
     -ソフトウェア:1つ70万円以上、または複数合計70万円以上

中小企業経営強化税制の拡充・延長

中小企業経営強化税制は、認定を受けた経営力向上計画に基づく設備投資を支援する制度です。対象設備の即時償却か税額控除(7〜10%)を選択でき、生産性向上やデジタル化を促進します。

今回の税制改正により、2年間(2027年(令和9年) 3月31日まで)延長されます。

・適用期限:2026年度末(2027年(令和9年) 3月31日)まで延長
・対象:資本金1億円以下の法人、資本金または出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人、常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
・優遇措置:即時償却または税額控除(10%、資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)のいずれかを選択
・対象設備:機械装置(160万円以上)、工具(30万円以上)、器具備品(30万円以上)、建物附属設備(60万円以上)、ソフトウェア(70万円以上)
・要件:中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画の認定を受けること

事業承継税制の見直し

法人版・個人版事業承継税制について、税制を最大限活用し、円滑な事業承継を促進するため、できるように、特例措置の見直しを行います。

・適用期限:法人版は2027年(令和9年)12月末、個人版 2028年(令和10年)12月末
・法人版:後継者の役員就任期間3年以上の要件を見直し
・個人版:事業従事条件の見直し


子育て・住宅支援

子育て世帯に対する住宅ローン減税等に係る所要の措置の延長

子育て世帯及び若者夫婦世帯を対象とした住宅ローン減税の優遇措置が、2025年(令和7年)12月31日まで1年間延長されます。

・対象:子育て世帯(18歳以下の子どもがいる世帯)、若者夫婦世帯(夫婦のいずれかが39歳以下の世帯)
・控除対象借入限度額:
        -長期優良住宅・低炭素住宅:5,000万円
        -ZEH水準省エネ住宅:4,500万円
        -省エネ基準適合住宅:4,000万円
・控除期間:13年間
・控除率:0.7%
・適用期限:2025年(令和7年)12月31日までに入居した場合
・所得要件:合計所得金額2,000万円以下
・床面積要件:40㎡以上(合計所得金額1,000万円以下の場合)の緩和措置も延長

生命保険料控除制度の拡充

現行制度では、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3つの区分で、それぞれ最大4万円の所得控除が認められています。今回の改正により、各区分の控除限度額が6万円に引き上げられます。

・対象:23歳未満の扶養親族がいる場合
・一般生命保険料控除の適用限度額:所得税において現行の4万円から6万円に引き上げ
・合計適用限度額:一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の合計で現行の12万円を維持
・一時払い生命保険料:控除対象から除外
・適用時期:令和8年分


その他

ガソリンの暫定税率廃止 

ガソリン税は、ガソリンに課される「揮発油税」と「地方揮発油税」の総称です。現在、ガソリン1リットルあたり53.8円の税金が課されており、このうち25.1円は「当分の間税率」(いわゆる暫定税率)として上乗せされています。本則税率は28.7円/Lです。

今回の税制改正大綱では、「いわゆるガソリンの暫定税率は廃止する。具体的な実施方法等については引き続き関係者間で誠実に協議を進める」という文言が盛り込まれました。

免税制度の見直し

外国人旅行者向け免税制度について、空港等での混雑防止・外国人旅行者の利便性向上・免税品の不正転売防止などを目的とした見直しが行われます。購入時に消費税を支払い、出国時に払い戻す方式に変更されます。

現在のおもな課題
・免税品の国内転売による不正利用の増加
・免税販売の要件を満たさない取引による追徴課税事案の発生
・出国時に免税購入品と購入記録情報が一致しない事例の増加
・免税購入者に資力がない場合、消費税の即時徴収ができず未納となるケース
・大量購入した免税品を国内で横流しする事例の増加

見直しの概要
・概要:購入時に消費税を支払い、出国時に払い戻す方式に変更(出国時に税関で持ち出しが確認された場合に免税販売が成立)
・消耗品の購入上限額(50万円)を撤廃
・特殊包装の要件を廃止
・適用開始時期:2026年(令和8年)11月1日

防衛力強化にかかる財源確保のための税制措置

防衛力強化に必要な財源確保のための税制措置が講じられます。

特別法人税の創設
・課税標準法人税額に対して4%の金額が付加される
・課税標準法人税額は、基準法人税額から基礎控除額を控除した金額とする
・基礎控除額は年500万円とする
・開始時期:2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度

たばこ税の見直し
・加熱式たばこの税率を、段階的に引き上げ、紙巻きたばことの税率を揃える
・紙たばこと加熱式たばこの税率を揃えたうえで、2029年(令和11年)4月までに段階的に1本あたり1.5円引き上げ
・適用開始時期:2026年(令和8年)4月1日

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