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2025.06.04

【相続】空き家の発生を抑制する「空き家特例」とは。控除額、適用条件などを解説

近年、親の介護や看取りを経て、実家を相続するケースが増えています。  

しかし、相続した住宅に住む予定がない場合、空き家として放置されることが少なくありません。空き家の管理には手間がかかり、防犯や災害リスクの増加、さらには固定資産税の負担が継続することから、売却を検討される方も多くいらっしゃいます。

このような状況下で、相続した空き家を売却する場合に利用できるのが「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」、いわゆる「空き家特例」です。

本記事では、空き家特例の概要、適用要件、注意点などを解説し、制度の活用に向けた判断材料を提供いたします。


空き家特例の概要

空き家特例は、相続した被相続人の居住用家屋を一定の条件のもと売却した場合に、譲渡所得から最高3,000万円までの特別控除を受けることができる制度です。

この制度は、空き家の増加を抑制し、住宅の有効活用を促進するために、平成28年の税制改正で創設されました。譲渡益が生じる場合にこの控除を活用することで、所得税・住民税の負担が大幅に軽減される可能性があります。

ただし、制度の適用には複数の厳格な要件が設けられており、要件をひとつでも満たしていない場合は適用が認められません。

参考:
国土交通省 空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
国税庁 タックスアンサー|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例


主な適用要件

①被相続人の居住状況に関する要件
被相続人が死亡した時点で、単身でその住宅に居住していたことが要件となります。夫婦同居や家族との同居があった場合は適用されません。なお、被相続人が老人ホーム等に入所していた場合であっても、一定の条件を満たすことで例外的に適用が認められる場合があります。

②住宅の構造等に関する要件
対象となる住宅には、以下の条件があります。
・昭和56年5月31日以前に建築された住宅(旧耐震基準)
・区分所有建物(マンション等)ではないこと
・売却までに建物を取り壊す、または耐震リフォームを実施していること

③譲渡の時期および方法に関する要件
売却の期限と方法にも注意が必要です。以下の基準が設けられています。
・相続の開始日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡契約を締結し、引渡しが完了していること
・譲渡対価(売却価格)が1億円以下であること
・譲渡先が親族またはこれに準ずる者でないこと

仮に、被相続人の死亡日令和7年3月31日の場合、特例の適用期限は令和10年12月31日です。この期日までに売買契約と引渡しが完了していなければ、特例の適用はできません。

④譲渡を行う者(相続人)に関する要件
譲渡は、相続により住宅を取得した本人が行う必要があります。第三者に名義変更を行った上での譲渡や、相続人以外の者による売却は対象外となります。

また、共有名義で相続した不動産を売却する場合は、相続人全員の同意(売却そのもの、売却価格、引き渡し時期)が不可欠です。


制度を活用すべき対象者

空き家特例は、以下のような方にご活用いただきたい制度です。

・親から住宅を相続し、今後売却を検討している方  
・40〜50代で、将来的な実家の相続と処分を見据えている方  
・不動産を相続しても居住予定がない方、空き家管理に課題を抱えている方  
・売却後の税金が気になっている方(譲渡所得税の節税を検討したい方)

知っていれば大きな節税につながるにもかかわらず、申告の機会を逃してしまう事例も少なくありません。上記に当てはまる方は早めに検討を開始しましょう。


制度改正と適用範囲の拡大について

空き家特例は、制度創設以降、適用期限の延長や要件の緩和が行われてきました。

①適用期限の延長
創設当初、2023年(令和5年)12月31日までとされていた適用期限が、2027年(令和9年)12月31日までに延長されました。

②要件の緩和
2024年(令和6年)1月1日以降の譲渡については、売買契約に基づき、譲渡後、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに買主が耐震改修または取壊しを行った場合でも、特例の適用対象となりました。

③控除額の変更
2024年(令和6年)1月1日以降の譲渡で、相続人が3人以上いる場合、特別控除額が各人あたり2,000万円となりました(従来は3,000万円)。

これらの改正により、制度の適用範囲が拡大され、より多くの方が特例を利用しやすくなっています。


適用の可否を自己診断できるチェックシートの活用

空き家特例が適用できるかどうかを簡易的に確認したい場合は、国税庁が公開しているチェックシートを活用しましょう。このチェックシートでは、以下の項目について自己診断が可能です。

・被相続人の居住状況(単身だったかどうか)
・建物の構造や築年数
・売却時期および売却先の条件
・改修または取壊しの有無とその時期 など

国税庁 空き家特例チェックシート(PDF)はこちら

なお、チェックシートはあくまでも自己確認のための資料です。最終的な適用可否の判断は、税理士等の専門家に相談しましょう。


まとめ|制度の活用には計画的な対応が不可欠

空き家特例は、相続不動産の売却時における税負担を大幅に軽減できる有効な制度です。しかしながら、その適用には建物の状況、売却時期、譲渡方法等、多岐にわたる要件をすべて満たす必要があります。

また、法令改正により内容が変化しているため、過去に確認した情報が現在では適用外となっているケースもある点に注意が必要です。専門家による事前の確認と申告の準備を進めることで、制度の活用に繋がります。

税理士法人AOIみらいでは、空き家特例を含む相続不動産の売却・税務申告に関するご相談を承っております。
初回相談は無料で対応しております。制度の詳細やご自身の状況での適用可否について、お気軽にご相談ください。

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