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2025.12.20

【速報】2026年度(令和8年度)税制改正大綱を解説

2025年(令和7年)12月19日に『令和8年度税制改正大綱』が発表されました。

税制改正大綱とは、各省庁から出される税制改正の要望などを受け、与党の税制調査会が中心となって翌年度以降の税制改正の方針をまとめるものです。

この記事では主要な改正項目を分かりやすく解説します。
項目は順次追加・更新予定です(2025年12月20日更新)。

注意事項
※この記事は「令和8年度税制改正大綱」に基づき、重要なポイントを抜粋して解説しています。細かい基準・条件等は自民党の公式サイトに掲載されている「令和8年度 税制改正大綱」のPDFファイルにてご確認ください。
※税制改正大綱は方針を示すものであり、今後本記事とは異なる内容に変更される場合があります。

目次

個人所得税
・年収の壁を178万円へ引き上げ(基礎控除・給与所得控除の引き上げ)
・配偶者控除・扶養控除の連動見直し
資産形成・金融取引
・暗号資産取引 雑所得・総合課税から「申告分離課税」へ移行
・NISA(少額投資非課税制度)の対象を18歳未満に拡大
・超富裕層への課税強化
企業支援
・特定生産性向上設備等投資促進税制の創設
・賃上げ促進税制 大企業は廃止、中小企業は維持
・オープンイノベーション促進税制(M&A型)の拡充と延長
・中小企業者等の少額減価償却資産の特例 基準額を「40万円未満」へ引き上げ
・事業用資産の買換え特例 要件厳格化で3年延長
・カーボンニュートラル投資促進税制、要件厳格化で2年延長
相続・事業承継
・事業承継税制に係る特例承継計画の期限延長等
・納税猶予農地を公共事業で譲渡した場合の「利子税免除」が5年延長
・医業継続(医療法人の移行)に係る納税猶予特例、3年延長
住宅・リフォーム関連
・住宅ローン控除 5年延長、子育て世帯への優遇が「中古住宅」にも拡大
・住宅リフォームに関する減税措置
・土地等の譲渡所得に関する特例 期限延長および要件緩和
その他
・消費税・インボイス制度 小規模事業者の経過措置見直し
・社会医療法人等 訪日外国人への「3倍請求」でも優遇維持
・青色申告特別控除 優良電子帳簿限定で最大75万円控除へ。紙申告は優遇廃止


個人所得税

年収の壁を178万円へ引き上げ(基礎控除・給与所得控除の引き上げ)

所得税の控除額を引き上げ、「年収の壁」を178万円に引き上げる方針が示されました。

「178万円」という数字は、1995年当時の最低賃金と現在の最低賃金の比率(約1.73倍)を、当時の非課税枠103万円に乗じて算出されたものです(103万円 × 1.73 ≒ 178万円)。これは単なる減税ではなく、税制のインフレ調整という側面が強く、経済の実態に税制を追いつかせるための構造改革と言えます。


基礎控除の見直し(全納税者対象)

引き上げの概要
・現行の58万円から62万円に引き上げ(合計所得金額が2350万円以下の個人が対象)
・基礎控除の上乗せ特例について、最大控除額を37万円から42万円に引き上げられ、対象者を現行の給与収入200万円相当から475万円相当まで拡大

基礎控除の上乗せ特例 変更内容
給与収入 現行 改正後
200万円相当まで 37万円(恒久措置) 42万円(うち37万円は恒久措置)
200万円相当から475万円まで 30万円 42万円
475万円相当から665万円相当まで 10万円 42万円
665万円相当から850万円相当まで 5万円 5万円

給与所得控除の見直し(会社員・パート・アルバイト など)

引き上げの概要
・最低保障額を、現行の65万円から69万円に引き上げ
※給与所得控除引上げに伴い、源泉徴収税額表や年末調整に係る算出基準については、改訂が行われる


年収の壁 引き上げイメージ
基礎控除と給与所得控除の改正を合わせると、所得税がかかり始める年収ラインは以下のようになります。

項目 内容 改正後の金額 備考
①基礎控除 誰でも受けられる控除 104万円 本則62万円+ 特例42万円
②給与所得控除 給与収入から引ける控除 74万円 本則69万円+5万円
合計 ①+② 178万円 「年収の壁」が上昇

適用時期
・所得税:2026年(令和8年)分から適用(年末調整等は令和9年1月以降の支払分から対応)
・住民税:2027年度(令和9年度)分から適用 

なお、今後この控除額の引き上げは、消費者物価指数の動向に合わせて2年ごとに見直されます。今回の改正では、2026年・2027年分(令和8年・9年分)の2年間における控除額が発表されています。

配偶者控除・扶養控除の連動見直し

年収の壁引き上げに伴い、配偶者控除や扶養控除の適用判定に使われる「合計所得金額」のボーダーラインも見直されます。これにより、パートやアルバイトの収入が多少増えても、扶養から外れにくくなるよう調整が行われます。

以下の内容は、2026年分(令和8年分)以後の所得税に適用されます。

主な変更点

同一生計配偶者・扶養親族の所得要件:
配偶者控除や扶養控除の対象となるための要件(合計所得金額)を、62万円以下(現行58万円以下)に引き上げ

「ひとり親」の子の所得要件:
ひとり親控除を受けるための要件である「生計を一にする子」の総所得金額等の基準を、62万円以下(現行58万円以下)に引き上げ

勤労学生の所得要件:
勤労学生控除の対象となる合計所得金額の要件を、89万円以下(現行85万円以下)に引き上げ

家内労働者等の「必要経費」特例:
家内労働者(内職など)や外交員などが、事業所得等の計算において経費として認められる最低保障額を、給与所得控除の最低保障額に合わせて69万円(現行65万円)に引き上げ

資産形成・金融取引

暗号資産取引 雑所得・総合課税から「申告分離課税」へ移行

これまで雑所得として最大約55%の総合課税が適用されていた暗号資産取引について、金融商品取引法等の改正を前提に、株式等と同様の申告分離課税が導入されます。

税制を国際水準に合わせることで、海外へ流出した資金や人材を国内に呼び戻すための戦略的な減税措置です。

概要
・税率: 一律20%(所得税15%、住民税5%)
・損失繰越: 株式等と同様に、損失を翌年以降3年間繰り越して控除が可能
・適用時期: 金融商品取引法の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日

NISA(少額投資非課税制度)の対象を18歳未満に拡大

これまで18歳以上(成人のみ)とされていた要件が撤廃され、0歳から利用できる新たな枠組みが導入されます。実質的に「ジュニアNISA」の後継として復活する形となります。

対象年齢と利用枠
・対象:0歳〜17歳の未成年者
・年間投資枠:60万円
・非課税保有限度額:600万円
・成人NISAへの移行:18歳に達した時点で、自動的に通常のNISA(18歳以上向け)の制度へ移行し、非課税枠も成人の枠(年間360万円、最大1,800万円)に統合される
・適用開始日:2027年(令和9年)1月1日

運用方法
・原則として「つみたて投資枠」と同様の積立投資
・原則として18歳(1月1日時点)になるまで払い出しは制限されるが、子が12歳以降であれば、進学や教育資金、生活費などの特定の事由があり、かつ子の同意がある場合には、非課税での払い出しが可能

超富裕層への課税強化

株式譲渡益などの金融所得が多い富裕層に対し、税負担の公平性を図るための課税強化が行われます。

現在の所得税は累進税率を採用していますが、株式などの譲渡益は分離課税(一律税率)であるため、超富裕層になるとかえって税負担率が下がってしまう逆転現象(いわゆる「1億円の壁」)が課題とされていました。

今回の改正では、こうした超富裕層に追加負担を求める計算式が厳格化されます。 具体的には、追加課税の計算における控除額が3.3億円から1.65億円に半減され、さらに適用される税率も22.5%から30%へアップします。

概要
・特別控除額:現行の3.3億円から1.65億円へ引き下げ 
・税率:現行の22.5%から30%へ引き上げ 
・適用時期:2027年分(令和9年分)以後の所得税から適用


企業支援

特定生産性向上設備等投資促進税制の創設

「強い経済」の実現に向け、企業による大規模かつ高収益な「攻めの投資」を強力に後押しするため、新たな税制優遇措置が創設されます。 

産業競争力強化法の改正を前提に、国(経済産業大臣)から確認を受けた投資計画に基づき、一定規模以上の機械装置や建物などを取得した場合に、「即時償却(取得価額の全額を経費計上)」または「税額控除(最大7%)」のいずれかを選択適用できる制度です。

従来の投資減税と比較して、要件のハードルは高いものの、建物を含めた幅広い資産が対象となり、強力な節税効果が見込めます。

制度の概要 

適用対象となる要件:
本税制の適用を受けるには、以下の厳しい要件を満たす投資計画を策定し、認定を受ける必要があります。

①投資規模(下限額) 
・原則:投資計画の合計額が35億円以上
・中小企業者等:投資計画の合計額が5億円以上

②投資利益率(ROI) 
・投資計画における年平均の投資利益率が15%以上見込まれること

優遇措置の内容:
対象資産を取得し、事業の用に供した場合、以下のいずれかを選択できる
・特別償却:取得価額の限度額まで即時償却(100%損金算入)
・税額控除:取得価額の7%(建物・構築物は4%) 
    ※控除税額の上限は、その事業年度の法人税額の20%まで(繰越措置あり)

対象となる資産と規模:
単なる買い替えではなく、生産性向上に資する一定規模以上の資産が対象

・機械装置(1台 160万円以上)
・工具・器具備品(1台 120万円以上など)
・建物(1棟 1,000万円以上)
・建物附属設備・構築物(1つ 120万円以上など)
・ソフトウェア(1つ 70万円以上)

適用期間:
産業競争力強化法の改正法施行日から2029年(令和11年)3月31日まで

※本制度の適用を受ける投資計画期間中は、「中小企業経営強化税制」や「カーボンニュートラル投資促進税制」など、他の類似する税制優遇措置との併用はできません。

賃上げ促進税制 大企業は廃止、中小企業は維持

賃上げ促進税制について、企業規模に応じた見直しが行われます。 大企業については制度を前倒しで廃止し、中小企業に対しては現行の支援策が維持されます。

改正内容

大企業向け:適用期限を待たずに廃止:
賃金上昇率が高い水準にあることや、税制支援がなくても賃上げが進む環境にあると判断され、本来の適用期限(2027年(令和9年)3月末)を待たずに、2026年(令和8年)3月31日を以て廃止されます。

中堅企業向け:要件厳格化の上、令和9年3月末で廃止:
 従業員数2,000人以下の企業(中堅企業枠)については、適用期限(2027年(令和9年)3月末)までは制度が継続されますが、2026年度(令和8年度)(2026年(令和8年)4月1日〜2027年(令和9年)3月31日開始事業年度)における適用要件が以下のように厳格化されます。

・必須要件(税額控除率10%):賃上げ率 4%以上(現行3%以上)へ引き上げ 
・上乗せ要件:賃上げ率 5%以上で控除率+5%、6%以上で控除率+15%(現行は4%以上で一律+15%)

中小企業向け:現行制度を「維持」:
人材獲得競争の中で厳しい経営判断を迫られている中小企業に配慮し、2026年度(令和8年度)については現行の要件・控除率が維持されます。


なお、企業規模にかかわらず、教育訓練費を増加させた場合に税額控除率を上乗せする措置については、「教育訓練費の増加額を税額控除額が上回るケースがある」という会計検査院の指摘を踏まえ、全区分で廃止されます。

オープンイノベーション促進税制(M&A型)の拡充と延長

事業会社がスタートアップ企業の株式を取得する場合に、取得価額の一定額を所得控除できる「オープンイノベーション促進税制」について、 対象要件の緩和や合併時の税務処理の見直しが行われます。

改正内容

株式取得の要件緩和:
・現行:取得により、議決権の 50%超 を有することになる株式のみが対象
・改正後:取得時は50%以下であっても、取得から3年以内に50%超を有する見込みの株式も対象に追加  (※取得価額要件等の引き上げあり)

合併時の取扱い(特別勘定の取崩し):
・現行: 吸収合併した場合、積み立てていた特別勘定(損金算入額)を 一括で取り崩して益金算入する
・改正後:合併の翌事業年度から 5年間で均等に取り崩して益金算入 することが可能

適用期限:
2028年(令和10年)3月31日まで 2年延長 

中小企業者等の少額減価償却資産の特例 基準額を「40万円未満」へ引き上げ

中小企業が取得した少額資産を即時償却できる「少額減価償却資産の特例」について、物価高騰による備品等の価格上昇を踏まえ、対象となる資産の単価基準が「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられます。

改正内容
・損金算入できる基準額が、「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げ
・適用対象法人の見直し:本特例の対象となる中小企業者等のうち、常時使用する従業員の数が400人を超える法人については、適用対象から除外
・制度の延長:3年間延長(2029年(令和11年)3月31日まで)

事業用資産の買換え特例 要件厳格化で3年延長

事業用の土地建物等を譲渡し、一定期間内に新たな事業用資産を取得した場合に、譲渡益への課税を将来に繰り延べることができる「事業用資産の買換え特例」について、 適用期限が延長される一方で、適用要件の厳格化(対象資産の絞り込み)が行われます。

改正内容

①長期保有土地等の買換え(いわゆる9号買換え)の厳格化:
譲渡した土地等(所有期間10年超)に対し、国内にある土地建物等を買換資産とする場合(第9号)について、建物・構築物については「特定施設の用に供される建物等」や「特定施設に係る事業の遂行上必要な構築物」に限定される

②市街地再開発事業等による買換えの見直し:
 市街地再開発事業に伴う買換えについて、買換資産が「特定都市再生緊急整備地域」などの特定の政策区域以外にある場合、繰り延べ割合が現行の80%から60%に引き下げ

適用期限:
3年間延長(2029年(令和11年)3月31日まで)

カーボンニュートラル投資促進税制、要件厳格化で2年延長

脱炭素化に向けた企業の投資を支援する「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制(CN税制)」について、適用期限が延長されます。 ただし、より高い脱炭素効果を求める形に要件が見直され、優遇幅も縮小されます。

変更点
・適用期限:2年間延長(2028年(令和10年)3月31日まで)
・要件の厳格化と優遇幅の縮小:適用を受けるために必要な「炭素生産性向上率」の要件が引き上げられる一方、受けられるメリット(特別償却率・税額控除率)は引き下げられる

中小企業者の場合(改正後の主な内容)
・高い要件(炭素生産性向上率 22%以上) ※現行は17%以上
特別償却:30%(現行50%)
税額控除:10%(現行14%)

・通常要件(炭素生産性向上率 17%以上 22%未満) ※現行は10%以上17%未満
特別償却:30%(現行50%)
税額控除:5% (現行10%)

中堅・大企業の場合(改正後の主な内容)
・高い要件(炭素生産性向上率 25%以上) ※現行は20%以上
特別償却:30%(現行50%)
税額控除:8% (現行10%)

・通常要件(炭素生産性向上率 20%以上 25%未満) ※現行は15%以上20%未満
特別償却:30%(現行50%)
税額控除:3% (現行5%)


相続・事業承継

事業承継税制に係る特例承継計画の期限延長等

経営者の高齢化が進む中小企業の事業承継を円滑に進めるため、法人版・個人版の事業承継税制について、今回の改正で延長されることが発表されました。

改正内容
・法人版事業承継税制:特例承継計画の提出期限が、2027年(令和9年)9月末まで延長
・個人版事業承継税制:個人事業承継計画の提出期限が、2028年(令和10年)9月末まで延長

納税猶予農地を公共事業で譲渡した場合の「利子税免除」が5年延長

農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度において、実務上重要な「利子税免除」の特例措置が5年間(2031年(令和13年)3月31日まで)延長されます。

制度の背景
納税猶予制度の適用を受けている農地を譲渡・転用した場合、猶予されていた相続税・贈与税の本税に加え、猶予期間に応じた「利子税」の納付義務が生じます。 しかし、道路建設などの公共事業のための譲渡(収用交換等)については、納税者の意思によらない側面もあることから、特例として利子税の納付が免除されています。

医業継続(医療法人の移行)に係る納税猶予特例、3年延長

地域医療を守るため、医業承継時の税負担(贈与税・相続税)を猶予・免除する「医業継続に係る納税猶予等の特例措置」について、 期間延長に加え、要件の見直しが行われます。

これまで認定医療法人の要件として、「自由診療(自費患者)への請求額も、社会保険診療報酬の計算基準と同一でなければならない」という制約がありました。 今回の改正により、公的医療保険に加入していない「特定外国人患者(訪日外国人など)」に対する請求については、地域標準を超えない範囲で「保険診療報酬の3倍まで」の設定が許容されるようになります。

改正内容
・適用期限の3年延長(2029年(令和11年)9月30日まで)
・外国人患者への「自由診療価格」の制限緩和(地域標準を超えない範囲で、保険診療報酬の3倍まで)


住宅・リフォーム関連

住宅ローン控除 5年延長、子育て世帯への優遇が「中古住宅」にも拡大

住宅ローン控除の適用期限について、5年間の延長が決定しました。 また、子育て世帯・若者夫婦世帯に対する優遇措置が拡充され、これまで新築中心だった支援が「省エネ性能の高い既存住宅(中古住宅)」にも広がります。

改正内容

子育て世帯等への優遇を「既存住宅」へ拡充:
19歳未満の子がいる世帯等が「省エネ基準適合以上の既存住宅」を取得する場合も、借入限度額の上乗せ措置(限度額の引き上げ)の対象とする

適用期限の5年延長:
2025年(令和7年)末から2030年(令和12年)末まで延長

既存住宅の控除期間延長:
省エネ基準適合以上の既存住宅は、控除期間を10年間から13年間に延長

小規模物件の床面積要件緩和:
合計所得金額1,000万円以下の人が対象となる「床面積40㎡以上50㎡未満」の特例措置を、既存住宅(中古マンション等)へも拡大

住宅リフォームに関する減税措置

既存住宅のリフォーム工事を行った際に受けられる減税措置について、適用期限の延長や要件の見直しが行われます。所得税(確定申告による控除)と固定資産税(翌年度分の減額)の双方で、使い勝手を向上させる改正内容です。

①所得税の特別控除

耐震、省エネ、バリアフリー、三世代同居、子育て対応などの特定の改修工事を行った場合、工事費用の一部を所得税から控除できる制度です。今回の改正では、適用期限が延長されるとともに、単身者向けの小規模な住宅でも利用できるよう要件が緩和されます 。

改正内容

適用期限の3年延長:
2028年(令和10年)12月31日まで3年間延長 

床面積要件の緩和:
特定の改修工事を行った家屋について、合計所得金額1,000万円以下の人が対象となる「床面積40㎡以上50㎡未満」の特例措置を適用対象に追加

標準的な工事費用相当額の見直し:
控除額の計算基礎となる工事単価について、近年の工事実績を踏まえた金額へ見直し

②固定資産税の減額措置

耐震、バリアフリー、省エネ、長期優良住宅化リフォームを行った住宅について、翌年度分の固定資産税を減額する措置です。こちらも期間が延長されるほか、対象となる住宅の床面積要件が見直されます。

改正内容

適用期限の5年延長:

2031年(令和13年)3月31日まで5年間延長 

床面積要件の上限・下限の見直し:
減額措置の対象となる床面積要件について、上限を240㎡以下(現行280㎡以下)へ引き下げ、下限を40㎡以上(現行50㎡以上)へ引き下げ

土地等の譲渡所得に関する特例 期限延長および要件緩和

所有期間が5年を超える土地などを、優良な住宅地の造成やマンション建設などのために国や地方公共団体、民間事業者へ譲渡した場合に、譲渡所得税の税率が軽減される特例措置です。今回の改正では、適用期限の延長に加え、昨今の建築費高騰を踏まえた要件緩和や、災害リスクを考慮した適用除外などが盛り込まれています 。

改正内容

適用期限の3年延長:
2028年(令和10年)12月31日まで3年間延長 

建築費単価要件の緩和:
中高層耐火共同住宅等の建設を行う者への譲渡における「建築費単価上限額」の要件を、100万円/3.3㎡から160万円/3.3㎡へ引き上げ

適用対象事業の追加:
適用対象に、地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律に規定する承認地域経済牽引事業用地整備(仮称)を行う者への譲渡を追加

適用対象事業の除外:
適用対象から、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律の認定建替計画に従って建築物の建替えの事業を行う認定事業者への譲渡を除外 

災害リスク区域の除外:
2028年(令和10年)1月1日以後、譲渡した土地等が地すべり防止区域等内に存する場合は、本特例の適用対象外

その他

消費税・インボイス制度 小規模事業者の経過措置見直し

適格請求書等保存方式(インボイス制度)について、2026年(令和8年)9月末での終了や縮小が予定されていたスケジュールが見直されました。 

小規模事業者の税負担急増を防ぐため、2割特例終了後に「3割特例」が創設、仕入税額控除の8割特例の延長など、2029年(令和11年)9月末までの新たな支援策が講じられます。

売り手側(小規模事業者):3割特例の創設

免税事業者からインボイス発行事業者になった者を対象に、納付税額を売上税額の「3割(30%)」に抑える新たな特例計算を導入。2割特例は令和8年(2026年)9月30日で終了。

・対象期間:2026年(令和8年)10月1日から2028年(令和10年)9月30日まで
・対象事業者:2年前の課税売上高が1,000万円以下である等の要件を満たす、元免税事業者

買い手側(課税仕入):50%控除の開始時期が2年後ろ倒し

免税事業者からの課税仕入について、仕入税額相当額を一定の割合で控除できる経過措置の適用期限を、2026年(令和8年)9月末から2031年(令和13年)9月末に変更し、段階的に控除可能割合を下げる。

・2026年(令和8年)10月1日から2028年(令和10年)9月30日まで:70%
・2028年(令和10年)10月1日から2030年(令和12年)9月30日まで:50%
・2030年(令和12年)10月1日から2031年(令和13年)9月30日まで:30%

社会医療法人等 訪日外国人への「3倍請求」でも優遇維持

救急医療やへき地医療など、公益性の高い医療を提供する「社会医療法人」や「特定医療法人」等について、税制上の優遇措置(法人税の非課税・軽減税率など)を受けるための認定要件が緩和され、外国人患者への請求ルールが見直されます。

税制優遇(法人税の非課税措置など)を維持したまま、通訳手配などのコストがかかる外国人患者から適正な対価を受け取ることが可能となり、インバウンド受入れ体制の強化が容易になります。

改正内容

「3倍請求」の容認(要件緩和): 
認定・承認の要件である「自費患者への請求額制限(保険診療と同一基準)」について、公的医療保険未加入の「特定外国人患者(訪日外国人など)」に対しては、社会保険診療報酬の3倍までの金額設定を許容

対象となる法人:
社会医療法人/特定医療法人/認定医療法人/福祉医療機構/厚生農業協同組合連合会(JA厚生連)など

青色申告特別控除 優良電子帳簿限定で最大75万円控除へ。紙申告は優遇廃止

青色申告特別控除について、デジタル化の進展に合わせた構造改革が行われます。 高い水準で会計ソフトを活用(優良な電子帳簿の備付け)している事業者に対しては控除額を上乗せする一方、紙で申告を行う場合の「55万円控除」は廃止され、デジタル化への移行を強く促す内容です。

改正内容

最大控除額を「75万円」に引き上げ :
現行の「65万円控除」の要件(複式簿記+e-Tax等)に加え、訂正削除履歴が残る等の要件を満たす「優良な電子帳簿」の備付け及び保存を行っている場合、控除額を75万円に引き上げ

「55万円控除(紙申告)」の廃止:
複式簿記を行っていても、e-Taxを利用せず書面(紙)で申告する場合に適用されていた「55万円控除」を廃止。 これにより、書面申告の場合は複式・単式に関わらず、控除額が一律10万円に縮小

適用開始時期:
2027年(令和9年)分の所得税(2028年(令和10年)3月申告分)から適用

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