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2026.03.05

【令和8年改正】インボイス制度の経過措置が延長。3割特例、仕入れ税額控除割合の引下げスケジュールを解説

2023年10月にスタートしたインボイス制度(適格請求書等保存方式)について。制度導入から時間が経過し、本来であれば2026年(令和8年)9月末に、2割特例や8割控除などの激変緩和措置(経過措置)が終了、または縮小される予定でした。

しかし、個人事業主や企業の負担急増を防ぐため、令和8年税制改正大綱では新たな支援策として「3割特例」の創設、買い手側の控除割合引き下げスケジュールの延長・見直しが行われました。

本記事では、税理士法人AOIみらいが、最新のインボイス制度の見直し内容について、売り手(個人事業主)と買い手(発注元企業)それぞれの視点からわかりやすく解説します。今後の資金繰りや取引先との交渉に、ぜひお役立てください。

おさらい:インボイス制度の2割特例、仕入税額控除の経過措置とは?

制度の見直し内容に入る前に、そもそも現在のインボイス制度で設けられている特例や経過措置について簡単におさらいしておきましょう。

【売り手側】2割特例

 免税事業者からインボイス発行事業者になった小規模事業者個人事業主(基準期間の課税売上高が1,000万円以下など)を対象に、消費税の納税額を「売上時に受け取った消費税額の2割」に軽減する特例計算です。煩雑な経理処理や、新たな税負担を和らげる目的で導入されました。

【買い手側】仕入税額控除の経過措置(80%控除) 

本来、インボイス(適格請求書)を発行できない免税事業者からの仕入れは、消費税の仕入税額控除ができません(買い手側が消費税分を負担することになります)。しかし、制度開始からの一定期間は、特例として免税事業者からの仕入れであっても「80%」は控除できるという経過措置が設けられています。

経過措置見直しの背景

上記の特例は、もともと2026年(令和8年)9月末をひとつの区切りとして終了、または縮小される予定でした。しかし、これらが予定通りに終了・縮小されると、元免税事業者の納税負担が一気に跳ね上がり、発注元企業もコスト増を理由とした取引の見直しを迫られることが懸念されていました。

そこで政府は、急激な負担増をなだらかにするために、以下のような新たな経過措置の延長・創設を決定しました。


売り手側の改正内容|2割特例終了後に「3割特例」が創設

免税事業者からインボイス発行事業者になった個人事業主(売り手側)にとって朗報となるのが、新たな「3割特例」の創設です。

3割特例の対象期間と対象事業者

「3割特例」とは、消費税の納付税額を、売上時に受け取った消費税額の「3割(30%)」に抑えることができる特例計算です。

インボイス制度がスタートした当初(2023年(令和5年)10月)は、2割特例は2026年(令和8年)9月30日で終了し、その後すぐに本則課税(売上税額-仕入税額)か、簡易課税(業種ごとのみなし仕入率で計算)へ移行すると定められていました。しかし、特にサービス業などの第5種事業(みなし仕入率50%)に該当するフリーランスや個人事業主にとっては、2割負担からいきなり5割負担へと、税負担が2.5倍に急増してしまうリスクがあります。

そこで、2割特例期間終了後にすぐに本則課税または簡易課税へ完全移行するのではなく、2年間の経過措置期間が設けられました。

3割特例は個人事業主に限定される

3割特例は個人事業主のみに限定列挙されており、法人は対象外のため、注意が必要です。

現在2割特例を利用している小規模な法人であっても、2026年(令和8年)9月を含む決算期等をもって特例は完全に終了し、その後は本則課税または簡易課税へ移行することになります。

3割特例の対象期間と対象要件

個人事業主(実質的に個人申告)を対象とした措置であるため、対象期間は暦年の「年分」で規定されています。

・対象期間:令和9年(2027年)分および、令和10年(2028年)分の各課税期間
・対象事業者:免税事業者からインボイス発行事業者になった個人事業主
※2年前の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であること等の要件を満たす必要があります。

これにより、税負担が2割→一気に本則と増大するのではなく、2割→3割→(その後)と段階的に引き上げられることになります。

簡易課税制度との違い・どちらを選択すべきか?

3割特例の期間中、事業者によっては既存の簡易課税制度を選択した方が納税額が少なくなるケースがあります。サービス業や不動産業などは新設される「3割特例」が有利になりやすく、卸売業や小売業などは「簡易課税制度」が有利になる可能性が高いです。

簡易課税制度では、業種ごとに「みなし仕入率」が定められており、実質的な税負担割合が決まります。これを3割特例(実質負担3割)と比較すると、以下のようになります。

事業区分 主な該当業種 簡易課税のみなし仕入率 簡易課税の実質負担 有利になりやすい制度
第1種 卸売業 90% 1割 簡易課税
第2種 小売業など 80% 2割 簡易課税
第3種 建設業、製造業など 70% 3割 原則同等
第4種 飲食店業など 60% 4割 3割特例
第5種 サービス業など 50% 5割 3割特例
第6種 不動産業 40% 6割 3割特例

※実際の選択にあたっては、事前の届出要件や自社の正確な事業区分を確認する必要があります。判断に迷われた際は、税理士へのご相談をおすすめします。


買い手側の改正内容|免税事業者からの仕入税額控除の経過措置が延長

控除割合変更の新たなスケジュール

免税事業者からの課税仕入れについて、仕入税額相当額を一定割合で控除できる期間が、当初の予定よりも長く延長・細分化されました。もともとは2026年(令和8年)10月から一気に50%控除へ下がる予定でしたが、70%控除の期間が新たに設けられ、完全廃止までの期間が2031年(令和13年)9月末まで延長されました。

控除割合をなだらかに下げることで、買い手企業のコスト負担急増や、それに伴う免税事業者への急激な取引条件変更(取引停止など)を避ける狙いがあります。

・〜2026年(令和8年)9月30日:80% 控除(現行)
・2026年(令和8年)10月1日 〜 2028年(令和10年)9月30日:70% 控除(★新設)
・2028年(令和10年)10月1日 〜 2030年(令和12年)9月30日:50% 控除(2年延期)
・2030年(令和12年)10月1日 〜 2031年(令和13年)9月30日:30% 控除(★新設)
・2031年(令和13年)10月1日〜:控除不可(0%)

1免税事業者ごとの仕入れ税額控除額が、年間10億円→1億円に引き下げ

控除割合が細分化・延長された一方で、買い手側にとって重要な制限事項が追加されました。

2026年(令和8年)10月1日以後に開始する課税期間から、1免税事業者ごとの仕入れにかかる年間適用上限額が、現行の10億円から1億円へと大幅に引き下げられます。これは、特定の免税事業者との巨額取引による租税回避を防ぐための措置です。

年間1億円を超える取引がある免税事業者が存在する場合、超過分については一切の仕入税額控除ができなくなり、買い手企業の税負担が急増することになります。該当する取引先がある企業は、早期の対応と交渉が急務となります。

企業が取るべき対応と取引先とのコミュニケーション

経過措置が延長されたとはいえ、段階的に控除割合が下がり、発注元企業のコスト負担が増えることに変わりはありません。買い手側は、免税事業者との取引において適切なコミュニケーションが求められます。

注意点として、免税事業者であることを理由に、一方的な単価の引き下げや取引の打ち切りを行うことは、独占禁止法、改正下請法(中小受託取引適正化法:2026年1月施行)、またはフリーランス新法に違反する恐れがあります。

コスト増をどう分担するかについては、公正取引委員会のガイドライン等に従い、価格交渉の場を設けて双方が納得する形で取引条件を再検討する必要があります。


売り手側・買い手側が今から準備すべきこと

制度の見直しを受けて、売り手と買い手はそれぞれ今からどのような準備をしておくべきでしょうか。実務面でのポイントを整理しました。

1. 自社の納税・コストシミュレーション

まずは、2026年以降の数字を予測してみましょう。

【売り手側】
2割特例から3割特例に移行することで、納税額がどれくらい増えるのか。
例えば、課税売上が550万円(税抜500万円・消費税50万円)の場合、以下のような金額となり、5万円の増税となります。差額を事前に把握することで、経費の見直し、価格転嫁の検討などの対策が打てます。

・2割特例:50万円 × 20% = 10万円
・3割特例:50万円 × 30% = 15万円

 【買い手側】
控除割合が段階的に下がることによる利益への影響額(おもにコスト増)を正確に把握しましょう。 また、2026年10月以降は80%控除から70%控除への切り替えタイミングとなるため、会計ソフトの税区分設定の変更など、システム対応の準備も進めておく必要があります。

2. 取引先との条件再確認

【売り手側】
増税分を自社だけで被るのではなく、発注元企業へ価格転嫁(値上げ)を打診できるよう、提供価値の整理や交渉のタイミング見極めが必要です。

【買い手側】
企業においては、免税事業者の取引先と丁寧な対話を続けることが重要です。 

「2026年から控除率が変わりますが、御社はインボイス登録の予定はありますか?」
 「70%控除の期間中は、これまで通りの取引条件で継続しましょう」

など、お互いが無理なく取引を続けられる着地点を探りましょう。 

一方的な値下げ要求や取引の打ち切りは、独占禁止法、フリーランス新法に抵触する恐れがあります。制度変更を共通言語として、パートナーとしての関係を深める機会にすることが大切です。

3. 資金繰り計画の見直し

納税額やコストの変化は、直接キャッシュフローに影響します。 決算間際になって「税金が払えない!」と慌てることがないよう、決算の数ヶ月前に着地予想を行いましょう。

2026年以降の制度変更を加味した納税・資金繰り計画を立てることで、余裕を持って経営に専念できます。


まとめ:インボイス制度の最新動向を把握し、早めの対策を

インボイス制度の経過措置見直しにより、「3割特例」の創設や控除割合スケジュールの延長など、事業者の負担を和らげる措置が講じられました。

しかし、特例には必ず期限があり、最終的には本来の消費税負担へと移行していきます。だからこそ、「まだ先のこと」と後回しにせず、今のうちから正確なシミュレーションと取引先との対話を進めることが重要です。

「自社の場合、シミュレーションをしてみたい」
「取引先への対応について、第三者の意見が欲しい」

このようなお悩みがありましたら、ぜひ税理士法人AOIみらいにご相談ください。

私たちは「世の中からお金に関する不安と面倒をなくす」ことをミッションに掲げ、お客様のビジネスの成功に全力で伴走します。顧問契約やセカンドオピニオンを通じて、インボイス対応をはじめとする最適な財務・税務戦略をご提案いたします。

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