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2025.02.05
【iDeCo】受取時の退職所得控除、5年ルールが10年に変更。2025年(令和7年)税制改正内容と影響、対応策
老後資金形成のひとつである「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」が、2025年度(令和7年度)の税制改正で大きく変わります。掛金上限額の引き上げによる節税効果の拡大や、受取時の「5年ルール」から「10年ルール」への変更など、重要な改正点があります。
この記事では、iDeCoの基本的な特徴や受取方法、節税効果の具体例を紹介しながら、税制改正の内容とその影響を解説します。iDeCoを利用中の方、これからの利用を検討している方はぜひご一読ください。
iDeCoとは
iDeCoの概要と特徴
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)は、老後の資金を自ら準備するための私的年金制度です。基本的に20歳以上65歳未満の公的年金加入者が利用でき、毎月の掛金を自身で選んだ金融商品で運用します。
iDeCoの主な特徴は以下のとおりです。
税制優遇
・掛金は全額所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減される
・運用益が非課税
・60歳以降の受取時にも税制優遇あり
加入、掛金
・掛金の最低額は月額5,000円で、1,000円単位で自由に設定できる
・加入区分(国民年金の被保険者種別やお勤め先の企業年金の違い)※1 によって掛金の限度額が異なる
・運用商品は、定期預金や投資信託など、リスクの異なる商品から選択可能
※1 iDeCo公式サイト iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等
注意点
・原則、60歳まで受給・引き出しができない
・所得控除は本人の所得からのみ控除される
・加入時・拠出期間(運用期間)・受給時に手数料がかかる
iDeCoの受け取り方法
iDeCoの受け取り方法には、主に3つの選択肢があります。
・一時金として一括で受け取る
・年金として分割で受け取る
・一時金と年金を組み合わせて受け取る
一時金として受け取る場合
退職所得として扱われ、退職所得控除が適用されます。さらに退職所得には2分の1課税という優遇措置があり、(退職金 - 退職所得控除額)× 1/2 が課税対象となります。
例:勤続30年で退職金2,000万円を受け取る場合
・退職所得控除額は1,370万円(基礎控除額+勤続年数控除)
・課税対象額は(2,000万円 - 1,370万円)× 1/2 = 315万円
・315万円に対して退職所得税が課税される
また、退職所得は分離課税として扱われるため、他の所得とは別に税額が計算されます。これにより、一時金での受け取りは税負担が軽減される傾向にあります。
年金として受け取る場合
雑所得として扱われ、公的年金等控除が適用されます。5年から20年の間で受取期間を選択でき、受取開始時期も75歳までの間で自由に決められます。
受け取りに関する注意点
受取開始年齢は原則60歳からですが、加入期間が10年未満の場合は段階的に引き上げられます。また、75歳までに受取手続きをしないと自動的に一時金として受け取ることになるので注意が必要です。
節税効果の例
iDeCoを活用すると、様々な場面で税制優遇(節税効果)があります。以下に具体的な例を紹介します。iご自身の税控除額を知りたい場合は、iDeCo公式サイトに「かんたん税制優遇シミュレーション」で計算することができます。
積立時
・例:35歳の会社員、年収500万円
・毎月のiDeCo拠出額: 23,000円
・年間拠出額: 276,000円(全額所得控除の対象)
・年間の税金軽減額: 約55,200円
・30年間継続した場合の総節税額: 約165万円
運用時
・例:40歳の自営業者、年収1,000万円
・毎月のiDeCo拠出額: 68,000円
・年間拠出額: 816,000円
・年間の税金軽減額: 約321,280円
・運用益に対する20.315%の税金も非課税
受取時
・例:60歳の会社員
・iDeCo加入期間: 30年間
・形成した総資産: 1,000万円
・受取方法: 一時金
・適用される控除: 退職所得控除(1,500万円まで非課税)
・1,000万円全額を非課税で受け取り可能
2025年(令和7年)税制改正の内容と影響
2025年(令和7年)の税制改正大綱が、2024年12月27日に閣議決定され、iDeCoについての2点改正内容が発表されました。
①月額掛金の上限引き上げ
月額掛金の上限の引き上げが発表されました。これにより、拠出期間(運用期間)の減税効果が高まります。引き上げ内容は以下のとおりです。
・第1号被保険者(個人事業主・フリーランスなど) 月額6.8万円→ 7.5万円
・企業年金に加入している会社員 企業年金※2と合算で月額5.5万円→企業年金と合算で6.2万円。iDeCoの上限額は撤廃
・企業年金に加入していない会社員 月額2.3万円→6.2万円
※2 企業年金は、確定給付企業年金(企業型DB)・企業型確定拠出年金(企業型DC)を指します
②受取時の退職所得控除「5年ルール」が「10年ルール」へ変更
iDeCoの受け取り時に適用される「5年ルール」が「10年ルール」に変更されることが発表されました。この改正は2026年1月1日以降に支払われる退職一時金から適用されます。
「5年ルール」では、一時金を受け取った後、5年以上経過してから退職金を受け取れば、それぞれに対して別々に退職所得控除を適用できました。例えば、60歳でiDeCoの一時金を受け取り、65歳で退職金を受け取る場合、両方に対して退職所得控除が適用され、税負担が軽減されます。
「10年ルール」では、この経過期間が5年から10年に変更されます。例えば60歳でiDeCoを受け取り、65歳で退職金を受け取る予定の人は、退職所得控除を満額利用できないため税金が増えることになります。
受け取り時期・方法の対応策
5年ルールから10年ルールへの変更に伴い、iDeCoの受け取り時期・方法の見直しが必要です。
税負担を軽減する方法は、おもに以下の3つです。
①退職金を受け取る前にiDeCoを受け取る
iDeCoの一時金を先に受け取り、iDeCoと退職金の受け取り時期を10年以上空けることで、退職所得控除を最大限に活用できます。例えば、60歳でiDeCoを受け取り、70歳で退職金を受け取れば、両方に退職所得控除が適用されます。
ただし、この方法は70歳まで働ける環境が必要です。
②iDeCoを年金として分割受け取りを選択する
年金としての分割受け取りを選択すると、受取金は雑所得として課税されますが、公的年金等控除が適用されます。iDeCoと退職金の受け取り期間が10年未満を想定している場合は、一時金受取時の税負担を回避できます。
③退職金受け取りから10年以上経過してiDeCoを受け取る
例えば、60歳で退職金を受け取り、iDeCoの一時金は70歳以降に受け取ることで、両方の退職所得控除を活用できます。ただし、iDeCo受け取り時期まで資金を運用し続けるリスクも考慮が必要です。
まとめ
iDeCoは老後資金形成において有効な手段ですが、税制改正の影響を理解して活用することが重要です。老後の資産形成を効果的に行うためにも、制度変更による自身への影響を把握し、適切な対策を講じていきましょう。