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2025.04.08

親の相続対策はいつから?年代別チェックリストと子どもがすべき準備まとめ

相続は突然やってきます。「もっと早く相続対策をしておけばよかった…」と後悔する前に、親の年代に応じて備えることが重要です。特に40代〜60代の子世代にとって、親の相続について考え始めるタイミングは重要です。実際、50代では約7割の人が親の相続を経験し、60代では9割に達するとの調査もあります。

この記事では、40〜60代の子世代に向けて、親の年代別に「今できる相続準備」をわかりやすく解説します。


親の年代別 相続対策チェックリスト

まずは下記のチェックリストで、該当する親の年代、チェック項目を見てみましょう。

親の年代

チェック項目

50代 ▢ 財産の棚卸し(預貯金・不動産など)
▢ エンディングノートの提案
▢ 相続税の簡易試算
▢ 遺言書の意向確認
60代 ▢ 生前贈与の検討(暦年 or 相続時精算課税)
▢ 任意後見契約 or 家族信託の検討
▢ 遺言書の作成・更新
▢ 実家の処分・相続人の希望確認
70代 ▢ 財産の所在確認(通帳、証券、保険など)
▢ 遺言内容の最終確認・更新
▢ 家族会議の実施
▢ 認知症リスクに備える手続き完了
80代 ▢ 納税資金の確保(不動産売却・保険)
▢ 相続登記の準備
▢ 成年後見制度の検討
▢ 遺言書の保管場所周知
90代 ▢ 遺言書のみ作成なら緊急対応(自筆 or 危篤時)
▢ 財産管理の代行体制構築
▢ 葬儀・お墓・延命治療の希望確認
▢ 相続人の連絡先・資料の整備

すでに準備済のものはありましたか?
ここからは、年代別のチェックリストを詳しく解説します。


親が50代の場合:現状把握と相続税簡易チェック、遺言書の検討

親御さんが50代のでも、相続対策は「思い立った今」から始めるのがおすすめです。50代は働き盛りで元気な年代ですが、この時期から準備しておくことで不測の事態にも備えられます。

財産の棚卸し(現状の把握)
まずは親御さんの財産状況を一緒に整理します。預貯金や不動産など、現在どのような資産があるのかリスト化して把握することが大切です。これは将来の遺産分割や相続税の試算にも役立ちます。

子世代としては、「万一のときに備えて資産の一覧を作ってみない?」と提案し、親が自分で書き出すのをサポートすると良いでしょう。50代後半で親の預貯金額を把握できている人は半数以下という調査もあるため、早めに現状を共有しておくことが望ましいです。


相続税の簡易チェック
財産の概略が把握できたら、相続税がかかりそうか、おおまかに計算します。現在の相続税の基礎控除額(非課税枠)は 3,000万円 + 600万円×法定相続人の数 です。親の資産が基礎控除額を超える可能性があるなら、節税対策も意識しましょう。

遺言書の作成を検討
50代で「遺言書は早すぎるのでは?」と思うかもしれませんが、50代で遺言書を書くことは決して早すぎません。多くの人は高齢になってから検討しがちですが、病気や事故は突然起こり得ます。

親御さんが元気なうちに「エンディングノート」や遺言書に自分の意思を書き留めておいてもらえれば、いざという時に家族が困らずに済みます。「念のため将来の希望を書いておいてくれると安心だよ」と伝えるなど、遺言書作成を前向きに検討するよう促してみましょう。

コミュニケーションを密に
この年代から、少しずつ相続の話題を親子で共有し始めることも大切です。40代に入ったら親と相続について話し合っておくことが推奨されています。

とはいえ、親にストレートに「相続の話をしよう」と切り出すのは気が引けるもの。そこでエンディングノートを活用するのも一つの方法です。エンディングノートとは、自分の生い立ちや財産リスト、葬儀の希望など終活に関することを自由に書き留めるノートです。帰省の際に「銀行でもらったんだけど、試しに書いてみたら?」と親に手渡したり、自分が書いたものを見せてきっかけにするのも効果的です。


親が60代の場合:生前贈与・認知症対策など“実践フェーズ”に突入

60代は、定年退職や生活環境の変化を迎える時期です。財産状況も一段落し、将来の見通しが立ちやすくなるため、具体的な相続対策を本格的にスタートするタイミングと言えます。

生前贈与による財産移転
元気なうちに生前贈与を活用して計画的に財産を子や孫に移しておくと、相続時の税負担軽減に有効です。例えば、毎年110万円までの贈与であれば贈与税が非課税となる「暦年贈与」の仕組みがあります。

また、60歳以上の父母・祖父母が20歳以上の子・孫に贈与する場合に選択できる相続時精算課税制度では、累計2,500万円まで贈与税がかからない特例もあります(代わりに将来相続財産に加算)。

他にも、教育資金の一括贈与(孫等1人につき1,500万円非課税)や結婚・子育て資金の贈与(1人につき1,000万円非課税)など、条件を満たせば非課税で贈与できる制度も存在します 。

こうした制度は手続きが複雑なので、利用を検討する際は税理士に相談しましょう。子世代としては、毎年少額でも贈与を受けておけば将来の相続税対策になることを親に伝えましょう。

家族信託や任意後見契約の検討(認知症対策)
60代は判断能力がしっかりしている時期なので、この段階で将来の認知症リスクに備え、家族信託や任意後見制度を検討することも有効です。

家族信託とは、親が委託者となり財産管理を信頼できる家族(子など)に託す仕組みで、親が認知症になっても信託された財産は受託者である子が管理・処分できます。認知症による口座凍結への備えとしては、成年後見制度か家族信託の利用が有効と考えられています。特に家族信託は、親が判断能力のあるうちに契約しておく必要があるため、早めの準備が重要です。

任意後見契約も同様に、将来判断能力が低下した際に備えて信頼できる後見人を事前に指名しておく制度です。

これらは専門的な手続きになるため、司法書士や弁護士などの専門家と相談しながら進めましょう。子世代は「万一認知症になっても困らないように、今のうちに信託とか後見契約とかできるみたいだよ」と情報提供し、親御さんが前向きに検討できるようサポートしましょう。


遺言書の作成・更新
60代は遺言書作成の適齢期とも言われます。親御さんがまだ遺言書を作っていない場合、この機会に公正証書遺言を作成することを強くおすすめします。遺言書があれば、親が望む財産の分け方を明確にでき、相続人間の争い(いわゆる「争族」)を未然に防ぐことにつながります。

子世代としては、「遺言書はあると安心らしいよ」などと切り出し、必要性を伝えましょう。

親の意思と希望を確認
この年代から具体的に親の希望を聞いておくことも大切です。「実家の土地は将来どうしたいか」「誰に何を相続させたいか」などを生前に話し合っておけば、遺産分割で揉めるのを避けられる可能性が高まります。60代であればまだ気力もありますので、家族会議の場を設けてもよいでしょう。

子世代としては親の考えに耳を傾けつつ、自分たち(子供世代)の希望も遠慮せず伝えることで、お互いの認識をすり合わせましょう。


親が70代の場合:早めの手続き完了と認知症対策の最終局面

70代になると、体力・判断力の面でも今のうちにやっておくべき対策が明確になってきます。「まだ大丈夫」と思いがちですが、75歳を超えると認知症発症率が急増し始めます。

遺産目録の作成と財産の所在確認
親の資産をすべて把握している子世代は決して多くありません。思わぬところに財産があったり、逆に負債があるケースも考えられます。

預貯金口座のある金融機関名、不動産の権利証や登記簿情報、生命保険の証券、貸金庫の有無などは必ず把握しましょう。「もしものときに備えて、通帳や証券類の保管場所だけ教えておいて」とお願いし、子が一覧表を作成するのも良い方法です。

認知症対策の仕上げ
75歳~79歳で認知症有病率は約10%、80~84歳で22%、85~89歳では44%に達し、90代では64%超と言われています。まだ判断力がしっかりしているうちに、遺言書を公正証書で作成し終える、家族信託や任意後見契約を締結し終えるなど、「やるべきことを全て終える」意識で臨みましょう。

もし親御さんが軽度の認知症兆候を感じ始めているなら、早急に主治医に相談しつつ、法的な手続きも急ぎます。判断能力が失われてからでは遺言書は作成できず信託契約も結べません。

万一、認知症が進行してしまった場合は、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい財産管理を行うことになりますが、後見人制度は費用や手間もかかるため、できれば使わずに済むよう事前対策を講じましょう。


遺言内容の最終確認
既に遺言書を用意している場合でも、内容の見直しや最終チェックを行いましょう。家族構成に変化(相続人だった配偶者が先に他界した、新たな孫が生まれた等)があった場合、遺言を書き換えが必要です。

また、法律改正等で相続税の制度が変わる可能性もあります。親御さんには「遺言書の内容を一度みんなで確認しよう」と声をかけ、必要があれば公証人役場で書き直すサポートをしましょう。

遺言書が有効かつ最新の状態で保管されていれば、相続発生後の手続きは格段にスムーズになります。

家族で話し合い、意思の共有
親御さんが話せるうちに、相続について家族全員で話し合っておくと安心です。親の意向をヒアリングする、将来管理が難しそうな不動産(空き家など)は売却も視野に入れる、疎遠な兄弟姉妹が相続人になる場合は連絡先を確認する、親が遺言書を作っているか確認する、子が知らない財産がないか確認するなど、事前に話しておくべきポイントは多岐にわたります。

生前に家族で共有しておけば、いざ相続が発生したときに「そんなはずじゃなかった」という行き違いを防ぐことができます。子世代が音頭を取って、「みんなで元気なうちに話しておこう」と場を設けてみてください。


親が80代の場合:遺言・登記・納税など相続直前の最終準備

80代は、いつ相続が発生してもおかしくない年齢です。それまで準備してきたことの最終確認と、やり残しのないよう手続きを完了させましょう。

遺言書の最終チェックと保管
親御さんがお元気なうちに、遺言書の内容最終確認と保管場所の周知を行います。公正証書遺言であれば原本が公証役場に保管されていますが、自筆証書遺言の場合は法務局の遺言書保管制度に預けているか、自宅で保管しているか確認しましょう。

どこに遺言があるか家族が知らないと、せっかく作成しても相続発生後に見つけられない恐れがあります。

相続手続きの準備
相続発生後の具体的な手続きも見据えて準備しておきましょう。相続税申告が必要になりそうかどうかは常に念頭に置き、必要であれば納税資金を確保する計画を立てます。

相続税は被相続人の死亡から10か月以内に現金で納付する必要があり、不動産が多い場合は納税資金に困るケースもあります。事前に生命保険を活用したり、売却予定の不動産があれば生前に売って現金化しておくことも検討しましょう。

2024年の法改正により、相続で取得した不動産の登記は相続開始から3年以内に申請することが義務化され、怠ると10万円以下の過料(罰金)が科されることになりました。既に亡くなった祖父母名義のまま放置している土地などがあれば、それも含めて早めに名義変更手続きを済ませておく必要があります。子世代は親御さんに代わって司法書士に相談し、相続登記すべき不動産が残っていないか確認すると安心です。

成年後見の検討
親の判断能力が怪しくなってきた場合、成年後見制度の利用も視野に入れます。すでに家族信託や任意後見契約で対策済みならベストですが、何も準備がなく認知症が進行してしまった場合、家庭裁判所に法定後見人を選任してもらい、親の預貯金の管理や不動産処分を行うことになります。

例えば、親の介護費用を親名義の口座から引き出そうとしても、重度の認知症で口座が凍結されていると子でも引き出せません。そうした事態では成年後見人を立てるほかありません。また、介護費用や医療費の管理についても後見人が関与することになるので、兄弟姉妹間で負担や方針を話し合っておきます。

家族・親族との最終打ち合わせ
相続発生前にできる話し合いは、この時期が最後かもしれません。親御さんが高齢であれば、子世代同士(兄弟姉妹)で将来の役割分担や遺産分割の方針を事前にすり合わせておくことも有意義です。

例えば「実家は長男が引き継ぐ代わりに他の預金は均等に分けよう」といった大まかな合意があれば、争いを避けやすくなります。親族に法定相続人で疎遠な人がいる場合、その連絡先や生存確認も含めて情報共有しておくと安心です。


親が90代以降の場合:専門家の力を借りながら進める

90歳以上となると、子世代も60代前後となり「老老相続」の様相を呈します。相続対策はほぼ完了していることが理想ですが、現実には何も準備できていないケースもあるでしょう。この段階では、子世代ができる限りサポートしつつ、必要に応じて専門家の力を借りることが大切です。

遺言書が未作成なら最後のお願い
もし親御さんが90代で遺言書を作っていない場合、そして判断能力がしっかりしているのであれば、一刻も早く遺言を書いてもらいましょう。

残念ながら認知症などで判断能力を欠く状態になってしまっている場合、もはや有効な遺言書を作成することはできません。そうなる前に、「どんな形でもいいから気持ちを書き残して欲しい」と子として切に頼んでみましょう。公正証書遺言を作る余裕がなければ、せめて自筆証書遺言でも構いません。

子世代は親の意思を尊重しつつ、「子供たちに迷惑をかけたくないというお気持ちを形に残そう」と背中を押してあげてください。


財産管理の全面代行
90代になると、日常の財産管理も子世代が実質的に代行する場面が増えます。預金の引き出しや年金の管理、施設入所に伴う自宅の処分など、親御さん本人が対応困難な手続きは、子世代や後見人が行います。

銀行によっては親本人が来店困難な場合に代理手続きを認めてくれることもありますが、限界があります。後見人以外の子供が親名義でできることには制約が多いため、必要に応じて信頼できる専門家に相談しながら進めましょう。

葬儀やお墓、エンディングノートの最終確認:90代の親御さんであれば、葬儀の方法やお墓について考えがあるかもしれません。エンディングノートには財産のことだけでなく、介護や葬儀の希望、親戚知人へのメッセージなども書き残せます。言いにくい場合は、「自分も書いてみたから一緒にやってみよう」と寄り添ってあげましょう。


相続発生に向けた心構え
子世代としては心の準備も必要です。相続が発生したら速やかに相続税申告(10ヶ月以内)や遺産分割協議、相続登記(3年以内)などの手続きを進めなければなりません。

特に相続人が高齢の場合、手続きを先延ばしにすると次の二次相続(例:父から母へ、続いて母から子へ)の負担が一気に押し寄せることもあります。親御さんがご存命のうちに、戸籍や財産資料の収集方法を調べておく、信頼できる税理士や弁護士を探すなどの事前準備をすると良いでしょう。

まとめ

相続対策は親御さんの年齢に応じてやるべきことが変わりますが、「思い立った今」は準備開始に最適な時期です。準備が早すぎて困ることはなく、一度対策すれば定期的に見直すだけなので、早めの着手をおすすめします。

親に相続の話を切り出すのは難しい、何から手を付ければ良いか分からない、と感じる方も多いでしょう。そんなときは専門家への相談を検討してください。

税理士や弁護士、司法書士といった専門家は相続対策や手続きを数多くサポートしてきた実績がありますので、各家庭の事情に合わせた適切なアドバイスを受けることができます。

税理士法人AOIみらいは、相続対策・生前贈与・相続税申告において30年以上の実績があります。親御さんのご年齢や資産状況に応じた最適なプランニングから、生前贈与の税務サポート、相続発生後の相続税申告書作成までワンストップで対応いたします。

「何から始めればいい?」という段階からサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。

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