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2026.01.09

年収の壁、所得税は160万円→178万円に引き上げ。年収別の基礎控除額・減税額と、企業取るべき対応

2025年12月19日、2026年度(令和8年度)税制改正大綱が決定されました。かねてより議論されていた「年収の壁」については、最終的に所得税の課税最低限を178万円まで引き上げることが明記されました。

今回の記事では、「178万円の壁」の概要、社会保険・住民税の壁とのギャップ、中小企業経営者・人事労務担当者が今から準備すべき実務対応について解説いたします。

※2026年1月9日更新


年収の壁を178万円に引き上げ(基礎控除・給与所得控除の引き上げ)とは

改正の背景

2024年(令和6年)までは、給与所得者の課税最低限が103万円に設定されていました。これは基礎控除の48万円と給与所得控除の55万円を合わせた金額です。「103万円の壁」と呼ばれ、多くの非正規雇用者や主婦のパートタイマーが年収を抑える就業調整を行っていました。

しかし、最低賃金の上昇に伴い、実質的な非課税枠が縮小し、働き控えを招いていることが問題視され、2025年(令和7年)は、以下の内容で160万円の壁に引き上げられました。

・基礎控除を48万円から58万円に引き上げ
・給与所得控除の最低保証額を55万円から65万円に引き上げ
・基礎控除は一律10万円の引き上げと別で、給与年収別に上乗せ特例を実施

そして、今回発表された2026年(令和8年)税制改正大綱では、「160万円の壁」が「178万の壁」に引き上げると発表されました。

「178万円」という数字は、1995年当時の最低賃金と現在の最低賃金の比率(約1.73倍)を、当時の非課税枠103万円に乗じて算出されたものです(103万円 × 1.73 ≒ 178万円)。これは単なる減税ではなく、税制のインフレ調整という側面が強く、経済の実態に税制を追いつかせるための構造改革と言えます。

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改正後の内容

所得税控除額 引き上げの目的

・働き控えへの対応:年収の壁を引き上げることで、パート・アルバイト従業員の就業調整を防止し、労働供給を促進することを目指す
・所得減税による消費喚起:低所得層の手取りを増やすことで、消費を活性化し、経済成長につなげる
・インフレ対応:1995年からの最低賃金上昇率(1.73倍)に基づき、物価上昇に対応する

基礎控除の見直し(全納税者対象)

・現行の58万円から62万円に引き上げ(合計所得金額が2350万円以下の個人が対象)
・基礎控除の上乗せ特例について、最大控除額を37万円から42万円に引き上げられ、対象者を現行の給与収入200万円相当から475万円相当まで拡大

これまで37万円の特例は、給与収入200万円相当までに限定されていましたが、今回の改正で、
・対象が 給与収入665万円相当まで拡大
・上乗せ特例の最大控除額が42万円に引き上げ

となり、中間層まで含めた制度に変わります。
なお、合計所得金額が2350万円以下の場合は、基礎控除が段階的に控除額が減少します。

基礎控除の上乗せ特例 変更内容
給与収入 現行 改正後
200万円相当まで 37万円(恒久措置) 42万円(うち37万円は恒久措置)
200万円相当から475万円まで 30万円 42万円
475万円相当から665万円相当まで 10万円 42万円
665万円相当から850万円相当まで 5万円 5万円

給与所得控除の見直し(会社員・パート・アルバイト など)

・最低保障額を、現行の65万円から69万円に引き上げ
※給与所得控除引上げに伴い、源泉徴収税額表や年末調整に係る算出基準については、改訂が行われる

年収の壁 引き上げイメージ

基礎控除と給与所得控除の改正を合わせると、所得税がかかり始める年収ラインは以下のようになります。

項目 内容 改正後の金額 備考
①基礎控除 誰でも受けられる控除 104万円 本則62万円+特例42万円
②給与所得控除 給与収入から引ける控除 74万円 本則69万円+5万円
合計 ①+② 178万円 「年収の壁」が撤廃

適用時期

・所得税:2026年(令和8年)分から適用(年末調整等は令和9年1月以降の支払分から対応)
・住民税:2027年度(令和9年度)分から適用 

なお、今後この控除額の引き上げは、消費者物価指数の動向に合わせて2年ごとに見直されます。今回の改正では、2026年・2027年分(令和8年・9年分)の2年間における控除額が発表されています。


年収別の減税額試算

年収の壁が最大178万円に引き上げられることによる、年収別の減税額は以下のとおりです。

※所得税(復興特別所得税を含む)及び住民税の減税額を集計
※単身世帯や共働きを想定しており、基礎控除以外の所得控除はないものとして計算
年収 年収の壁が103万円→160万円へ
引き上げによる減税額
(令和7年度税制改正)
年収の壁が160万円→178万円へ
引き上げによる減税額
(令和8年度税制改正案)
年収の壁引き上げによる
減税額累計
①+②
200万円 24,000円 13,600円 37,600円
300万円 20,500円 8,100円 28,600円
400万円 37,300円 8,100円 45,400円
500万円 20,400円 36,800円 57,200円
600万円 40,900円 73,500円 114,000円
800万円 30,700円 8,100円 38,800円
1,000万円 23,500円 9,400円 32,900円
1,500万円 33,700円 13,500円 47,200円
2,000万円 33,700円 13,500円 47,200円

住民税・社会保険料の壁も変動あり

2026年(令和8年)は、住民税と社会保険料における年収の壁にも変動があります。

社会保険料、26年10月に106万円の壁が撤廃

社会保険の加入基準となる年収の壁には、主に106万円と130万円の基準が存在します。   

年収106万円の壁
従業員数51人を超える企業に勤務し、週の所定労働時間が20時間以上、かつ月額賃金が8万8千円以上(年収換算で約106万円以上)のパートタイム労働者などが対象となります。

年収130万円の壁
主に従業員数50人以下の企業で働く方や、106万円の壁の要件を満たさない場合に適用されます。年収が130万円以上になると、配偶者の扶養から外れ、自身で国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。

つまり、年収が130万円を超えた場合、所得税は軽減されますが、新たに社会保険料(健康保険・厚生年金)が発生します。年収が178万円まで増加した場合でも、社会保険料や住民税の負担により、所得増と手取り増加が比例しない点には注意が必要です。

2026年10月に「106万円の壁」が撤廃
さらに、社会保険の加入要件が今後数年で大きく変更されます。

2026年10月以降、週の所定労働時間が20時間以上の従業員(学生を除く)は、原則として全員が社会保険の加入対象となります。賃金要件(月額8.8万円)の撤廃、企業規模の段階的撤廃が行われ、「106万円の壁」が撤廃されます。

なお、「週20時間以上」という労働時間の要件は変更がないため、週20時間未満の労働者については、現状のまま加入義務は発生しません。

社会保険加入対象拡大 主なスケジュール
・2026年10月:賃金要件(月額8.8万円以上)の撤廃
・2027年10月以降:企業規模要件の段階的な撤廃
・2029年10月:個人事業所 常時5人以上のものを使用する全業種の事業所適用対象
(※現在は法定17業種が対象)

住民税の年収の壁

住民税の非課税限度額は、原則として各自治体の条例によって定められています。2026年(令和8年)の税制改正では、以下のように改正される予定です。

①給与所得控除は65万円から69万円に引き上げ
②2027年度分(令和9年度分)及び2028年度(令和10年度分)の個人住民税に係る給与所得控除の最低保障額は、①に加え、5万円引き上げ
③基礎控除額(多くの自治体で45万円程度)は維持

①〜③を踏まえると、非課税となる給与収入ラインは、119万円前後になる想定です。そのため、所得税が発生しない178万円以内であっても、住民税は年収119万円を超えた時点で課税対象となります。

なお、正確な非課税限度額は自治体・扶養家族の状況などによって異なるため、自身の居住する自治体の情報を確認するように従業員に促しましょう。


企業が取るべき対応

ここでは、中小企業経営者や人事労務担当者が取るべき具体的な対応策をご紹介します。

①従業員への周知と説明

税制改正の内容を従業員に正確に伝えられるよう、準備を整えましょう。

住民税・社会保険の壁は、所得税の壁と異なることを伝える

所得税の非課税限度額が178万円に引き上げられた情報だけでなく、住民税・社会保険の年収の壁は178万円ではないことを明確に伝えましょう。所得税の減税効果を強調すると、従業員は手取り収入が大幅に増加すると誤解する可能性があります。


働き方に関する制度(正社員登用制度など)があれば併せて伝える

パートタイマーの社会保険加入促進、正社員登用制度などを設けている場合は、今回の改正に加えて、制度の情報を伝えましょう。

社会保険への加入は、将来の年金受給額の増加や、傷病手当金、出産手当金といった保障の充実につながるメリットがあるため、 従業員はより長期的な視点で自身の働き方を検討できるようになります。

質疑応答の準備

従業員から、以下のような相談・質問をされる可能性があります。適切な情報提供、アドバイスができるよう準備をしましょう。

・手取り収入への影響について
・新しい控除額に合わせて、勤務時間をどのように調整すべきか
・年収が178万円を超えた場合の所得税の計算方法
・各種控除の適用、影響について
・「106万円の壁」や「130万円の壁」との関係
・より長時間働くことによるキャリアアップの可能性
・雇用形態の変更可能性

②勤務体制・給与体系の見直し

特にパートタイマーや非正規雇用者の働き方に大きな変化が予想されますので、以下の対応を検討しましょう。

柔軟な勤務体制の導入
従業員の希望に応じて、より柔軟な勤務時間や給与設定を提供することを検討します。これにより、従業員の就業意欲向上と人材確保につながる可能性があります。

給与体系の再設計
160万円から178万円に引き上げられる控除額に合わせて、パートタイマーや非正規雇用者の給与体系を見直します。

③人事・給与システムの更新

新しい控除額や特定親族特別控除に対応できるよう、人事・給与システムの更新や見直しを行いましょう。年末調整や源泉徴収処理が正確に実行されるようにテストを行ったり、運用マニュアルの整備も必要です。

まとめ

2026年(令和8年)の所得税の年収の壁引き上げは、従業員にとって所得税負担軽減の機会となる一方で、住民税と社会保険には、それぞれの「年収の壁」が存在します。

企業は、この状況を正確に理解し、従業員に対して丁寧かつ分かりやすいコミュニケーションを行うことが不可欠です。従業員が自身の状況を適切に把握し、納得のいく働き方を選択できるよう支援していくことが、人材定着・採用強化にもつながるでしょう。

弊社では社会保険労務士とも連携しています。改正に伴う対応について疑問や不安があれば、税理士法人AOIみらい(東京都新宿区)にお気軽にご相談ください。

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