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2024.08.23

【2024年10月】社会保険適用拡大、従業員51人以上も加入対象に。改正内容・企業の対応策を解説

2024年10月から、社会保険の適用対象となる範囲が「従業員51人以上の企業」に拡大されます。これにより、社会保険加入義務の対象外だったパート・アルバイトの人々が、新たに社会保険の対象となることがポイントです。

本記事では、この社会保険適用拡大について、企業が知っておくべきこと、対応すべきことを詳しく解説します。


2024年10月の社会保険適用拡大 概要

社会保険適用拡大はこれまでも段階的に進められていますが、2024年10月より、従業員数51人〜100人の企業が新たに社会保険の適用対象となります。下記条件を満たしたパート・アルバイトは、社会保険の加入対象となります。

①週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
②月額賃金が8.8万円以上
③2ヶ月を超える雇用見込みがある
④昼間学生でない

厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイトから引用

社会保険とは

社会保険とは、国民の健康や生活を保障するための制度です。健康保険、厚生年金保険、雇用保険などが含まれます。社会保険を支える2本の柱が健康保険と厚生年金保険で、これらは従業員と雇用主(企業)が保険料を半分ずつ負担することで成り立っています。

従業員は、社会保険に加入することで、病気やケガの際の医療費負担が軽減されるほか、老後の生活を保障する年金を受け取ることができます。

従業員の数え方

以下のA・Bの合計が従業員数となります。

(A)フルタイムで働く従業員数
(B)週労働時間および月労働日数がフルタイムの3/4以上の従業員

厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイトから引用

原則として、この従業員数が常時51人以上である場合社会保険の適用対象となります。厚生年金保険の被保険者総数が、直近12ヶ月のうち6ヶ月以上基準を超える見込であれば、適用対象となります。

法人は法人番号が同一の全事業所を合計し、個人事業所はそれぞれの事業所ごとにカウントします。


106万円の壁・130万円の壁への影響

2024年10月以降、従業員51人以上の企業に勤めるパート・アルバイトは、社会保険適用拡大条件を満たす場合、給与から保険料が天引きされます。

その結果、社会保険料の控除により給与106万円未満の従業員よりも手取りが減少することがあります。これが『106万円の壁』です。

該当する場合は、以下のどちらかを選択する必要があります。
・現状の労働時間を維持し、社会保険に加入する
・週20時間未満に労働時間を減らし、社会保険の加入を回避する

企業側から見ると、従業員51人以上の場合、今後130万円の壁の対応は少なくなり、106万円の壁の対応がメインになります。今回の改正により、社会保険の加入を希望しない従業員がいる場合は労働時間短縮となるため、該当従業員の賃上げ・新規採用など人員不足の対策が必要です。

また、これまで社会保険に加入していなかった従業員が新たに社会保険に加入することで、企業の社会保険料負担は増加します。

年収103万円・130万円の壁については、弊社公式ブログでも解説しています。併せてご覧ください。


社会保険加入のメリット・デメリット

社会保険に加入することによるメリット・デメリットも把握しておきましょう。
ここでは従業員側、企業側に分けて紹介します。

従業員のメリット
・傷病手当金・出産手当金を受給できる
・将来の年金受給額の増加(厚生年金が上乗せされる)
・国民健康保険の加入者だった場合、健康保険料が企業との折半になり負担が軽くなる
・130万円の扶養基準を意識せずに働くことができ、収入増加に繋がる
・死亡した場合は遺族に遺族厚生年金が支給される

従業員のデメリット
・社会保険料の負担が増えるため、手取り額が減少する可能性がある

企業のメリット
・「社会保険完備」とすることで、優秀な人材を確保できる
・扶養の壁解消により、長時間働いてもらえる
・労務管理の効率化

企業のデメリット
・社会保険料の負担が増加
・扶養範囲内で働きたいパート・アルバイトが採用しにくくなる
・社会保険に加入したくない従業員の労働時間の減少


保険料の変化

パート・アルバイトの従業員が社会保険に加入した場合、保険料と年金額の例を紹介します。

Aさん(28歳) 医療事務アルバイト・国民年金に加入している

Bさん(35歳) スーパーマーケット パート・配偶者の扶養内

Cさん(60歳) 清掃会社パート・国民年金未加入

厚生労働省 社会保険適用ガイドブックから引用


制度改正における企業の対応手順

1.加入対象者の把握

社会保険未加入の従業員をについて、以下のすべてに該当するパート・アルバイトがいるかを確認します。

①週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
②月額賃金が8.8万円以上
③2ヶ月を超える雇用見込みがある
④昼間学生でない

 2.加入対象者への説明

 加入対象となる従業員に対して、社会保険制度の内容や加入することによるメリット・デメリットなどを丁寧に説明します。厚生労働省の社会保険適用拡大特設サイトには、従業員とのコミュニケーションのポイントが紹介されています。また、従業員向けチラシも掲載されていますのでご活用ください。

事業主向け
厚生労働省が発行する事業主向けガイドブック
社会保険適用拡大のこんなとき!どうする?手引き

従業員向け
パート・アルバイトのみなさまへ 社会保険適用拡大ガイドブック
従業員向けチラシ(加入のメリット・社会保険を考える3ステップ・Q&A)

3.必要書類の準備・提出

2024年9月上旬までに、日本年金機構から、新たに適用拡大の対象となることを知らせる通知書類が届きます。届書を作成し、2024年10月7日までに厚生年金保険の「被保険者資格取得届」を届け出ます。

『年収の壁・支援強化パッケージ』の活用を視野に

「年収の壁・支援強化パッケージ」は、106万円・130万円の年収の壁を意識せず、パートやアルバイトの方が働けるように促進する制度です。近年の労働人口減少や最低賃金上昇の影響を受け、令和5年10月より開始しています。

4つの取組みが発表されていますので、自社に合った方法をぜひご活用ください。106万円の壁の対応策は、②キャリアアップ助成金 コースの新設 が該当します。

①社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外
②キャリアアップ助成金 コースの新設
③事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
④企業の配偶者手当の見直し促進


まとめ

2024年10月の社会保険適用拡大は、企業にとって大きな影響を与える可能性があります。本記事で解説した内容を参考に、自社の状況に合わせて適切な対応を進めていきましょう。

弊社には社会保険労務士も在籍しています。
改正に伴う対応について疑問や不安があれば、税理士法人AOIみらい(東京都新宿区)にお気軽にご相談ください。

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