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2024.01.26

「年収の壁」130万円超でも最長2年は扶養可能に。パート・アルバイト人材有効活用できる制度とは

2023年10月より、厚生労働省が発表した「年収の壁・支援強化パッケージ」が開始されました。これは社会保険料が発生する年収のライン、つまり「年収の壁」の課題への対策として施行されています。

本記事では「年収の壁・支援強化パッケージ」の内容・企業側の注意点を解説いたします。

扶養範囲内で働くパート・アルバイトが多い企業の方は、ぜひご確認ください。


年収の壁とは

年収の壁とは、パートタイムやアルバイト労働者が世帯主の扶養範囲内で働く際に適用される年収基準です。

「106万円」「130万円」のようにいくつか基準があり、年収が一定額を超えると世帯主の扶養範囲から外れ、社会保険料などの負担が発生し、手取りが減少することがあります。

そのため、パートタイムやアルバイトで働く労働者が年収の壁を超えないように「働き控え」を検討するパートタイムやアルバイト労働者が存在しています。

年収の壁の種類・条件は「【扶養控除】年収103万円、130万円の壁とは。中小企業が対応すべきことを解説」で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

130万円超でも扶養可能。「年収の壁・支援強化パッケージ」とは

「年収の壁・支援強化パッケージ」は、106万円・130万円の年収の壁を意識せず、パートやアルバイトの方が働けるように促進する制度です。近年の労働人口減少の問題や最低賃金上昇の影響を受け、厚生労働省が令和5年10月より開始することを決定しました。

当面の対応として、4つの取組みが発表されています。

1.社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外
2.キャリアアップ助成金 コースの新設
3.事業主の証明による被扶養者認定の円滑化
4.企業の配偶者手当の見直し促進

社会保険料負担が小さくなる「社会保険適用促進手当の標準報酬算定除外」

短時間労働者への被用者保険の適用を促進するための施策です。非適用の労働者が新たに適用となった場合に、労働者の保険料負担を軽減するために(手取り額減少にならないように)、「社会保険適用促進手当」を支給することができます。

新たに発生した労働者負担分の保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる「標準報酬月額・標準賞与額の算定に含まない」と定められています。

当該手当を標準報酬月額と標準賞与額の算定に含めない時期は最大2年間とされています。事業主の保険料負担も軽減されますので、新たに被用者保険の適用となった短時間労働者がいる場合は、適用できないか確認しましょう。

対象となる標準報酬月額は以下のとおりです。

①対象者:標準報酬月額が10.4万円以下の者
②報酬から除外する手当の上限額:被用者保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額(※)とする
③期限の上限:最大2年間の措置とする

※令和5年度の厚生年金保険料18.3%、健康保険料率(協会けんぽの全国平均)10.0%、介護保険料率1.82%の場合の本人負担分保険料相当額

標準報酬月額 8.8万円 9.8万円 10.4万円
上限額(年額) 15.9万円 17.7万円 18.8万円

助成金額は1人につき最大50万円。キャリアアップ助成金 コースの新設

106万円の年収の壁への対応として、キャリアアップ助成金のコースが新設されます。「社会保険適用時処遇改善コース」を設置し、短時間労働者の社会保険加入で発生する手取り収入の減少を解消できる仕組みを作ります。

下記の取り組みを行う事業者に対して、最大3年間の助成金支給を行います。申請人数に上限は設けられていません。

①手当等で収入を増加させる
②労働時間延長と賃金増額を組み合わせる
③ ①②を併用





厚生労働省「年収の壁」への当面の対応策 より引用

130万円の壁の対応策。事業主の証明による被扶養者認定の円滑化

「年収が一時的に130万円以上になる場合、事業主の証明を提出すると扶養扱いの継続処理が早く行われる」という施策です。

これまでは、社会保険被保険者の被扶養者として認定を受けた方が年収130万円以上となった場合、被扶養者認定を取り消されてしまうリスクがありました。

この施策により、事業主が労働者に「一時的な収入増加があった理由の証明」提出すれば、被扶養者認定が迅速に行われることになりました。労働者に一時的な収入増加があっても、事業主がその理由を証明し認められれば、労働者は被扶養者でいることが可能です。

なお、「一時的な事情」として認定するため、1人の従業員につき連続2回までを上限と定められています。

厚生労働省「年収の壁」への当面の対応策 より引用

企業の配偶者手当の見直し促進

企業から支給される配偶者手当は、社会保険被保険者に扶養されている配偶者が就業調整を行う一因となっている現状がありました。

配偶者手当の支払い条件に「配偶者の年収が一定額未満であること」などの収入制限を設ける企業は多数存在しています。また、この条件がパート・アルバイト勤務者の就業調整の要因となっているとされています。

今回の「年収の壁・支援強化パッケージ」により、配偶者手当の仕組みの見直し促進が開始されました。企業でも配偶者手当の見直しが進むよう、見直しの手順・資料などが今後公表される予定です。


まとめ・中小企業が本制度を活用するポイント

扶養範囲内で働くパート・アルバイトを雇用する中小企業にとって、人材不足解消に繋がる施策となるでしょう。効果的に活用するためには、社内の制度変更を行い、その内容を従業員に正確に伝え、従業員のニーズを汲み取ることポイントです。

従業員のニーズを汲み取るには、従業員ののキャリア目標や収入の希望を理解し、それに応じた雇用形態や労働条件を検討する必要があります。扶養の範囲内で働きたい従業員には柔軟な労働時間を提供し、より収入を増やしたい従業員には追加の業務やスキルアップの機会を提供するなど、1人ひとりとコミュニケーションを行いましょう。

制度の変更への対応として、経営者は常に関連する法律や政策の最新情報を入手し、その変更が企業運営や従業員の条件にどのように影響するかを分析する必要があります。専門家との連携や業界団体からの情報収集も有効です。

制度変更を正確に伝えるには、変更内容や影響を明確に説明し、彼らの意見や懸念を聞く機会を設けることが重要です。オープンな対話を通じて、従業員の理解を深め、信頼関係を築くことができるでしょう。

弊社には社会保険労務士も在籍しています。働きやすい環境作りや、人件費の適切な管理について疑問や不安があれば、税理士法人AOIみらい(東京都新宿区)にお気軽にご相談ください。

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