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2026.04.07

経営計画書は、関わる人たちへの「約束の本」〜AOIみらいカンファレンスレポート②〜

税理士法人AOIみらい CEOの杉山です。

先日の「AOIみらいカンファレンス」のラストセッションでは、組織づくりの根幹となる「経営計画」について、私自身の体験をお話しさせていただきました。

多くの経営者様が、事業計画や経営計画書の必要性を感じながらも、「絵に描いた餅になる」「現場に浸透しない」という課題を抱えていらっしゃるかと思います。

私たちも全く同様でしたが、今のAOIみらいは、経営計画書をベースに毎年着実に成長し続けています。

従業員数は設立時の14名から28名へ、顧問先様数は120社から236社へ、売上は1.76倍。

そして、私が本当に嬉しいのは、数字よりも社員たちが「我々はこうしたい」と自分ごととして会社の未来を語るようになったことです。

カンファレンスでは、なぜ私たちが経営計画書を作り始めたのか、何を経験し、何に気づいたのか。失敗も痛みも正直に、5年間の実録をお伝えしました。


衝撃と焦燥。「私たちは、胸を張って指導できているか?」

そもそも、なぜ経営計画書を作る必要があるのでしょうか。

私が経営計画書を作ろうと決心したのには、ある強烈なきっかけがあります。

2018年か2019年頃、税理士業界で有名な「古田土会計」様の経営計画発表会に、長坂京と共に参加する機会がありました。社員・ゲスト合わせて700〜800名が集まる大きなホールで、自社の数字をすべて公開し、堂々と方針を発表しているのを見て、衝撃を受けました。

私たちは税理士法人ですので、お客様に「数字をしっかり見ましょう」「未来の計画を立てましょう」とお伝えし、一緒に考える役割を担っています。古田土会計様の姿を見て「私たちがまず手本となり、実践していなければ、お客様を導くことはできない。襟を正さないといけない」と痛感したのです。

また、仕事に恵まれ忙しい日々を送っていながらも、「この忙しさは社員の幸せに繋がっているのか?」という疑問もありました。

社員が安心して働き、家族も応援してくれるような会社にするためには、会社がどこへ向かっているのか、将来どうなるのかを示す道しるべが必要だと確信し、経営計画書の作成に着手しました。

AOIみらいの経営計画書に書いていること

AOIみらいにおいて、経営計画書は単なる事業計画ではなく、「社員とその家族に対する、未来への約束の本」と定義しています。

最初はA4用紙17枚のシンプルなものから始まりましたが、毎年改良を重ね、今では43ページになりました。いつでも見返せるよう、Web版で社内公開しています。

内容は大きく「方針」と「未来像」の2軸で構成しています。

①方針
「私たちは何のために存在し、どういう価値観で仕事をするのか」
組織のOSにあたる部分です。

  • 経営理念・MVV: 私たちは何のために存在し、どういう価値観で仕事をするのか。
  • 基本方針・行動指針: 「常にオープンでいる」「誠実でいる」など、日々の判断基準。
  • お客様への姿勢: どのような価値を提供し、どのようにお客様と向き合うか。

②未来像
「この会社にいれば、どういう仕事ができるようになるか」
「将来どういう収入になっていくか」
社員が安心してキャリアを描けるように、具体的な未来像を書き込んでいます。

  • 中期事業計画・単年度計画: 売上、利益の目標数値。
  • 労働分配率の明示: ここが非常に重要です。「会社がこれだけ利益を出したら、そのうち何%を給与や賞与として皆さんに還元します」ということを数字で約束しています。
  • 採用計画・人員計画: いつ、どんな人を、何人採用するのか。
  • 投資計画: 設備やシステム、教育にどれだけ投資するか。

方針と未来像が揃って初めて、経営計画書は生きた羅針盤となります。

想いだけでは生活を守れませんし、数字だけでは人の心はついてきません。この2つを統合することで、経営者の覚悟を示し、組織の共通言語としています。

方針を明確にすることの覚悟と痛み

税理士法人化し、経営計画書で方針と未来像を共有したことで大きな変化が訪れました。

結論を申しますと、法人化する以前からの在籍メンバーは全員退職となりました。

「こんな価値観を大切にします」「組織としてこう動きます」と旗を掲げると、それまでのやり方に慣れ親しんだメンバーとの間に、どうしても摩擦が生じてしまうのです。

長年苦楽を共にした仲間が去っていくことは、身を切られるような経験です。「自分のやり方は間違っているのではないか」と自問自答も繰り返しました。

しかし、ここで方針を曖昧にしては、残ってくれた社員や未来の仲間に申し訳が立たない。

「全員に好かれる計画」ではなく、「会社の価値観」を明確に示すことこそが、強い組織を作るための通過儀礼なのだと覚悟を決めました。

計画を作って実践し始めると、いろんなことが起きます。課題が吹き出し、理想と現実のギャップが見えてきます。それでも、やってみないと何も起きません。

この5年を振り返って、痛みを伴う経験こそが私たちを強くしてくれた、挑戦した分だけ結果が出た、と実感しています。

組織にどのような変化が起こったのか

成果① 「私は」から「我々は」へ

社員一人ひとりの未来像を描いて共有し始めてから、組織に少しずつ化学反応が起き始めました。

最も実感したのは、社員たちが使う「主語」の変化です。

以前は「私はこう思う」「俺はこうしたい」という個人の視点がベースでした。それが今では、「我々はこうしたい」「チームとしてどうしよう」という言葉が自然に出てくるメンバーが増えてきています。

これは、小さいようで本当に大きな変化です。自分ごとと会社ごとが重なる瞬間に、人は初めて会社の未来を「自分のこと」として語り始めるのだと感じています。未来への安心と希望が、本当の意味でのチームを育てる土台になっていく。その実感が、今少しずつ育まれてきています。

成果② 社員が気づきを言語化して、理念浸透に繋がった

経営計画を進める中で、私が最も難しいと感じ続けているのが「理念の浸透」です。

ミッション・ビジョン・バリューは、数値目標と違って「これができたら達成」というゴールが見えにくい。専門家の間でも「理念浸透には10年単位かかる」と言われています。

私たちの取り組みは、段階的に進化しています。

  • 初期:ルールとして明文化し、打ち出す
  • 現在:ストーリーテリングの導入(全体ミーティングで、毎月のバリューテーマに対する気づき・体験を発表)
  • 次の段階:新入社員が「文化を体感する」仕組みの構築

導入の効果として、最初は発言に苦手意識があった社員も、バリューテーマに沿って自分の気づきを言語化する習慣を重ねることで、全体ミーティングで自分の言葉で話せるようになっています。

評価制度とも連動させ、バリューテーマからの気づきや行動を発表する機会を月2回設けています。この繰り返しが、理念を「ルールとして守るもの」から「自分の中に落とし込むもの」へと変えていく土台になっています。

理念の浸透は、10年単位でかかると言われています。AOIみらいはその過程の途上にありますが、「話してよい場がある」という感覚が組織に少しずつ定着してきたと感じています。次のステップは、新入社員がその文化を自然に体感できる仕組みづくりです。

解説:バリューテーマとは

AOIみらいが掲げる6つのバリュー(行動指針)の中から、毎月1つをピックアップして月間のテーマとして設定する取り組みのことです。会社が定めたミッション・ビジョン・バリューを、社員一人ひとりの内側に落とし込み、浸透させることを目的としています。

AOIみらい 6つのバリュー(行動指針)

  1. 常にオープンでいる:「いつでも気軽に相談できる存在になる」ために、率直さとポジティブさを持ち、ありのままを伝え、ありのままを受け入れます。
  2. 傾聴する:相手にとってベストな選択になるように、思い込みを捨てて耳を傾けます。
  3. お金のプロでいる:プロフェッショナルとして日々学び、世の中にアウトプットし続けます。
  4. 誠実でいる:物事を前進させるために、言いにくいこともはっきり伝えます。
  5. 利他の心を持つ:「周りの人を助けるために何をすればよいか」を基準に行動します。
  6. 効率を追求する:個人に依存せず、組織全体でお客様をバックアップするために、効率化を追求します。

具体的な運用方法

毎月「今月のバリューテーマ」が設定され、全社員が参加する全体ミーティングの場で、自身の業務や日常における「気づき」や「体験」を発表し合います。

  • 全員がアウトプットをする:一部の社員だけでなく、新入社員も含めて全員が発表します
  • バリューに関する自問自答をする:テーマが「誠実でいる」だった場合、社員は「誠実とはどういうことか」を日常的に意識して過ごします。「自分のこの行動は誠実だったな」と感じた具体的なエピソードを持ち寄り、全社員に共有します。

このように、毎月特定のバリューに焦点を当て、自分の言葉で言語化する「ストーリーテリング」を繰り返すことで、社員がバリューを意識して行動する習慣が組織に根付きます。

採用基準の転換:「スキル重視」から「いい人重視」へ

計画の実践を通じて、採用のあり方も根本から変えました。

【Before】スキル重視の採用

かつては即戦力を求め、スキルや資格を最優先で採用していました。しかし、どんなにスキルがあっても、価値観が合わなければお互いに不幸になることを何度も経験しました。「業界にいれば仕事ができる」と思って採用した人が、思っていたのと違う、ということも少なくありませんでした。

【After】MVVに共感できる「いい人」重視の採用

今はMVVに共感できるかどうかを最重視しています。スキルは入社後に育てられますが、価値観の不一致は教育では埋められないからです。

採用通知を出した後も、「我々と一緒に仕事をするか、最終的にあなたが選んでください」と伝えています。会社が採用を決めるだけでなく、社員にも「選んでもらう」。その姿勢が大切だと考えています。

同じ方向を向く仲間が集まると、意思決定のスピードが格段に上がります。「なんでこんなことやるんですか」という反発が極端に減り、「まずやってみよう」という文化が育まれていきます。

おわりに:経営計画書は「更新し続ける地図」

経営計画書は、一度作れば完成するものではありません。環境の変化に合わせて毎年更新し、全社員の前で発表し(経営計画発表会)、日々の業務ですり合わせを行う。この運用のプロセスこそが重要です。

そして重要なのは、「魂(MVV・想い)」と「数値(中期事業計画)」の両輪で回すことです。それによって、未来へ向かう生きた羅針盤になっていきます。

最初から両方揃えなくても大丈夫です。まず数値計画だけでも、MVVだけでも、どこから始めてもいい。何か一つ始めると、芋づる式に「次はこれも必要だ」が見えてきます。最も重要な課題から計画を落とし込み、少しずつ肉付けしていくことをおすすめします。


AOIみらいは、自らが実験台となり、失敗も成功も経験してきたからこそ、机上の空論ではない「生きたソリューション」を提供できると確信しています。

  • 経営計画を作りたいが、進め方が分からない
  • 組織の方向性を統一し、強いチームを作りたい
  • AIを活用して、経営判断のスピードを上げたい

このような課題をお持ちの経営者様は、ぜひお気軽にお声がけください。税理士法人AOIみらいと、今回登壇したAOI立春会のメンバーが、皆様を全力でサポートいたします。

まずは小さく、最初の一歩を踏み出してみませんか?皆様と共に、未来への物語を紡いでいけることを楽しみにしております。

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