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2025.03.03

【2025年4月・10月施行】育児・介護休業法改正のポイント、中小企業が取るべき対応策を解説

2025年、育児・介護休業法が大きく改正されます。この改正は、仕事と育児・介護の両立支援をさらに強化し、働きやすい環境を整備することを目的としています。

改正は2段階で施行されます。第1段階は2025年4月1日、第2段階は同年10月1日からとなります。
この記事では、改正の主なポイントと、中小企業としての対応策を詳しく解説いたします。

育児・介護休業法とは

育児介護・休業法は、仕事と育児・介護の両立を支援するための法律です。労働者が職業生活と家庭生活を両立できるよう支援することが目的とされています。

育児介護休業法では、以下について制度が定められています。

・育児休業:1歳未満の子どもを持つ労働者が取得できる休業制度。原則として子どもが1歳になる誕生日の前日まで取得可能
・介護休業:要介護状態にある家族を介護するために、通算して93日間を限度として取得できる休業制度
・子の看護休暇:子どもの看護のために取得できる休暇制度
・介護休暇:要介護状態の家族の介護や世話をするために取得できる休暇制度

また、上記の主要制度に加えて、以下のような支援措置も定められています。

・所定外労働の制限
・時間外労働の制限
・深夜業の制限
・所定労働時間の短縮等の措置

参考:厚生労働省公式サイト「育児・介護休業法について」


2025年4月施行の主な改正ポイント

子の看護休暇の拡充

これまで小学校就学前の子を対象としていましたが、改正後は小学校3年生修了までに拡大されます。また、取得事由も拡大され、従来の子の疾病や傷害の世話に加え、学級閉鎖や入園式・卒園式への出席なども対象となります。

企業は就業規則等の見直しが義務付けられ、業務の調整や代替要員の確保などが必要です。

所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大

所定外労働の制限(いわゆる残業免除の対象)が拡大されます。これまで3歳未満の子を持つ従業員に限定されていましたが、改正後は小学校就学前の子を持つ従業員まで拡大されます。

企業は就業規則等の見直しが義務付けられ、業務効率化・人員配置見直しなどを行う必要があります。

育児用テレワーク導入が努力義務化・短時間勤務制度の代替措置にテレワーク追加



育児のためのテレワーク等の導入の努力義務化

育児に関するテレワーク導入が企業の努力義務となります。3歳未満の子を養育する従業員がテレワークを選択できるよう、企業は社内整備が必要です。

短時間勤務の代替措置にテレワークを追加
短時間勤務制度の代替措置として、「テレワーク」が追加されます。これにより、業務の性質上短時間勤務が困難な場合でも、テレワークを通じて育児と仕事の両立を図ることが可能になります。

育児休業取得状況の公表義務の拡大

育児休業の取得状況の公表義務が、従業員300人超の企業にまで拡大されます。公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。

年1回、公表前事業年度の終了後3か月以内に、インターネットなど一般の方が閲覧できる方法で公表が必要です。

参考:厚生労働省公式サイト 男性の育児休業取得率の公表について

介護休暇を取得できる労働者の要件緩和

労使協定により除外できる労働者の範囲から、「勤続6か月未満の労働者」が撤廃されます。結果として、雇用形態によっては入社1ヶ月未満でも介護休暇の申請が可能になります。

介護離職防止のための雇用環境整備

事業主は以下のいずれかの措置の実施が義務付けられます。

  1. 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
  2. 介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
  3. 自社の労働者の介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
  4. 自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知

介護離職防止のための個別周知・意向確認等

介護が必要と申し出た従業員に対して、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項の周知と介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向の確認を、個別に行わなければなりません。 

①介護に直面した旨の申出をした従業員への対応
・介護休業制度等に関する事項の周知
・介護休業の取得・介護両立支援制度等の利用の意向確認
・周知・確認方法:面談、書面交付、FAX、電子メール等のいずれか

②介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供
従業員が介護休業・介護両立支援制度等の理解と関心を深めるため、事業主は介護休業制度等に関する以下の事項について情報提供が義務付けられています。

介護のためのテレワーク導入

介護を行う従業員向けのテレワーク導入が企業の努力義務となります。これにより、介護と仕事の両立がより容易になることが期待されます。

表の引用元:厚生労働省 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 リーフレット


2025年10月施行の主な改正ポイント

柔軟な働き方を実現するための措置の義務化

3歳から小学校就学前の子を持つ従業員向けに、柔軟な働き方を実現するための措置が義務化されます。表に記載の「選択して講ずべき措置」の中から、2つ以上の措置を選択して講ずる必要があります。

仕事と育児の両立に関する意向聴取・配慮の義務化


「柔軟な働き方を実現するための措置の個別の周知・意向確認」が新たに義務付けられます。企業は対象となる従業員を把握し、適切な方法で周知・意向確認を行う体制を整備する必要があります。

表の引用元:厚生労働省 育児・介護休業法 改正ポイントのご案内 リーフレット


中小企業への影響と対応策

中小企業で取るべき対応策

就業規則の見直し
法改正に合わせて、就業規則の見直しが必要になります。具体的には、子の看護休暇、所定外労働の制限、柔軟な働き方に関する規定などを追加・変更する必要があります。専門家のアドバイスを受けながら、自社の状況に合わせた適切な規定を整備しましょう。

柔軟な働き方の導入
テレワークや時差出勤など、柔軟な働き方の導入を検討する必要があります。中小企業にとっては、設備投資やシステム導入のコストが課題になる可能性がありますが、段階的な導入や既存のツールの活用など、自社に合った方法を模索しましょう。

業務の効率化・標準化
従業員の急な休暇取得にも対応できるよう、業務の効率化や標準化を進めることが重要です。マニュアルの整備や、複数の従業員が同じ業務を担当できる体制づくりなどを行いましょう。

従業員への周知と意向確認
新しい制度について、従業員への周知を徹底することが大切です。説明会の開催や個別面談の実施など、従業員の理解を深め、意向を確認する機会を設けましょう。

改正への対応が企業にもたらすメリット

育児・介護休業法の改正への対応は、一見すると企業にとって負担増のように感じられるかもしれません。しかし、適切に対応することで、以下のようなメリットが期待できます。

人材の確保と定着
子育てや介護と仕事の両立支援を充実させることで、優秀な人材の確保や離職防止につながります。

生産性の向上
柔軟な働き方の導入により、従業員の働きやすさが向上し、結果として生産性の向上が期待できます。

企業イメージの向上
両立支援に積極的な企業として評価されることで、企業イメージの向上や採用活動での優位性につながります。

多様な人材の活用
様々な事情の従業員が活躍できる環境を整備することで、多様な人材の能力を最大限に引き出すことができます。

活用できる助成金・支援制度の活用検討を

「両立支援等助成金」など、法改正への対応を支援する助成金や支援制度があります。また、各地の労働局や中小企業支援センターなどでは、法改正に関する相談窓口を設けています。

これらの支援を積極的に活用し、円滑な対応を心がけましょう。


まとめ

育児・介護休業法の改正は、中小企業にとって対応すべき課題ではありますが、同時に、働き方改革を推進し、より魅力的な職場環境を作り出すチャンスでもあります。計画的に準備を進め、従業員と企業の双方にとってプラスとなる改革を実現しましょう。

厚生労働省の公式サイト、特設サイトなども併せてご確認ください。

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