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2026.10.31

2026年(令和8年)分の年末調整、税制改正で何が変わる?昨年からの変更点と実務対応・スケジュール

2026年(令和8年)分の年末調整では、令和8年度税制改正により、基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の引上げが適用されます。改正は2026年(令和8年)12月1日に施行され、2026年分の所得税に適用されます。

11月までの源泉徴収は改正前のままで、差額は12月の年末調整でまとめて精算します。この流れは昨年2025年(令和7年)の年末調整と同じです。昨年と異なるのは、当てはめる控除額と扶養の対象になる収入のラインです。

本記事では、年末調整を担当する総務・労務ご担当者様に向けて、改正の概要と、申告書の確認、システムの準備、従業員への周知、社内スケジュールの4つの実務対応を整理します。

令和8年度税制改正の概要

主な変更点は次のとおりです。

項目 2025年(令和7年)分 2026年(令和8年)分
基礎控除 最大95万円 最大104万円
給与所得控除の最低保障額 65万円 74万円
扶養親族・同一生計配偶者の所得要件 58万円以下(給与収入123万円以下) 62万円以下(給与収入136万円以下)
配偶者特別控除の対象 58万円超133万円以下 62万円超133万円以下
特定親族特別控除の対象 58万円超123万円以下 62万円超123万円以下
勤労学生の所得要件 85万円以下 89万円以下
一般生命保険料控除(23歳未満の扶養親族がいる場合) 上限4万円 上限6万円

※所得要件は合計所得金額

参考:国税庁『令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし』

基礎控除および給与所得控除の引上げ

基礎控除104万円と給与所得控除の最低保障額74万円を合わせ、所得税の課税最低限は178万円になります(昨年は160万円)。これらの見直しにより、いわゆる「160万円の壁(所得税の年収の壁)」は「178万円の壁」に引き上げられます。

基礎控除104万円と給与所得控除の最低保障額74万円は、2026年(令和8年)分と2027年(令和9年)分の金額です。2028年(令和10年)分以後は、現行制度では所得区分に応じて控除額が変わります。たとえば合計所得金額132万円以下では、基礎控除は99万円になります。

年収の壁178万円 AOIみらい公式ブログ 関連記事:
年収の壁、所得税は160万円→178万円に引き上げ。年収別の基礎控除額・減税額と、企業が取るべき対応

扶養親族等の所得要件の引上げ

扶養親族と同一生計配偶者の所得要件は、合計所得金額62万円以下(給与収入136万円以下)になりました。配偶者特別控除、特定親族特別控除、勤労学生控除の所得要件も、あわせて引き上げられています。

23歳未満の扶養親族がいる場合の生命保険料控除の特例

23歳未満の扶養親族がいる方は、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の上限が4万円から6万円に引き上げられます。対象は、生計を一にする23歳未満(2004年1月2日以後生まれ)の親族です。16歳未満の子も対象ですが、親族の合計所得金額の見積額が62万円以下(給与のみの場合は収入136万円以下)である必要があります。令和7年度税制改正で創設され、令和8年度税制改正で2027年(令和9年)分まで延長されました。

年末調整における実務対応と準備事項

1. 各種申告書の変更点と確認項目

・基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書

基礎控除額は、本人の合計所得金額に応じて次のように変わりました。合計所得金額2,350万円以下の範囲では、昨年の5段階が3段階に整理され、合計所得金額132万円超489万円以下の区分は上がり幅が大きくなっています。

基礎控除額の比較表

本人の合計所得金額(給与収入だけの場合の目安) 2025年(令和7年)分 2026年(令和8年)分
132万円以下(約206万円以下) 95万円 104万円
132万円超336万円以下(約475万円以下) 88万円 104万円
336万円超489万円以下(約665万円以下) 68万円 104万円
489万円超655万円以下(850万円以下) 63万円 67万円
655万円超2,350万円以下(2,545万円以下) 58万円 62万円

※括弧内の給与収入は令和8年分の目安

給与所得控除の最低保障額74万円は、給与収入220万円以下の方に適用されます。給与収入が220万円を超える方の給与所得控除額は、昨年から変わりません。給与所得控除後の給与等の金額は、国税庁『令和8年分 年末調整のしかた』の「令和8年分の年末調整のための給与所得控除後の給与等の金額の表」(47〜54ページ)で確認できます。

配偶者控除・配偶者特別控除の判定では、配偶者の合計所得金額をこの改正後の給与所得控除で計算します。配偶者の給与収入が136万円以下なら配偶者控除、136万円超207万円以下なら配偶者特別控除の対象です(昨年はそれぞれ123万円以下、123万円超201万5,999円以下)。いずれも、控除を受ける本人の合計所得金額が1,000万円以下で、生計を一にすることなどの要件があります。給与収入の目安は、配偶者に給与以外の所得がない場合です。

控除額は、同じ『年末調整のしかた』の「令和8年分の配偶者控除額及び配偶者特別控除額の一覧表」(55〜56ページ)で確認できます。

参考:国税庁『令和8年分の年末調整のための給与所得控除後の給与等の金額の表』
参考:国税庁『令和8年分の配偶者控除額及び配偶者特別控除額の一覧表(年末調整のしかた)』

・扶養控除等(異動)申告書
令和8年分の扶養控除等(異動)申告書に記載する事項は、改正後も変わりません。

ただし、改正によって新たに扶養控除等の対象となる親族がいる従業員は、その旨を記載した申告書を会社へ提出します。このとき、異動月日及び事由欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載します。

同時に回収する令和9年分の扶養控除等申告書も、改正後の所得要件で判定します。親族の2027年(令和9年)中の所得の見込み額が62万円以下(給与収入のみの場合は136万円以下)であれば、扶養控除等の対象です。令和9年分の扶養控除等申告書では、19歳以上23歳未満で合計所得金額の見積額が62万円超100万円以下(給与のみの場合は136万円超174万円以下)の親族も、源泉控除対象親族に含まれます。毎月の源泉徴収と年末調整では対象範囲が異なるため、区別して確認してください。

参考:国税庁『令和9年分 給与所得者の扶養控除等申告書の記載例』

・特定親族特別控除申告書
19歳以上23歳未満(平成16年1月2日から平成20年1月1日生まれ)の親族は、給与収入によって分かれます。

  • 136万円以下:扶養控除(特定扶養親族63万円)の対象。扶養控除等申告書に記載
  • 136万円超197万円以下:特定親族特別控除の対象。特定親族特別控除申告書を提出(控除額は給与収入159万円以下で63万円、197万円以下で3万円まで段階的に減少)

・保険料控除申告書
23歳未満の扶養親族がいる場合の一般生命保険料控除は、次のとおりです。

年間の新生命保険料(一般) 控除額
30,000円以下 支払保険料の全額
30,000円超60,000円以下 支払保険料×1/2+15,000円
60,000円超120,000円以下 支払保険料×1/4+30,000円
120,000円超 一律60,000円

3つの生命保険料控除を合わせた上限12万円は変わりません。23歳未満の扶養親族に関する欄の記入と、控除額の計算をご確認ください。

参考:国税庁『令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A』
参考:国税庁『令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし』
参考:国税庁『令和8年分年末調整のしかた(手順などの説明)』

2. 年末調整・給与計算システムの準備

給与ソフトについては、次の3点に対応しているかをベンダーにご確認ください。

  • 12月の年末調整で、改正後の基礎控除と令和8年分の年末調整のための給与所得控除後の給与等の金額の表を使っているか
  • 12月1日以後に支払う給与で、改正後の扶養の所得要件を反映できるか
  • 2027年(令和9年)1月以後の給与で、令和9年分の源泉徴収税額表に切り替わるか

参考:国税庁『令和8年分 年末調整のしかた』
参考:国税庁『令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A』

3. 従業員への周知および情報提供

改正点の多くは、従業員が申告書に正しく記入しなければ年末調整に反映されません。申告書の配布時に、次の点を周知しておくことをおすすめします。国税庁の従業員向け資料も活用できます。

  • 家族の収入が給与のみの場合、136万円以下であれば扶養親族の所得要件を満たすこと。扶養控除には、生計を一にすることや原則16歳以上であることなど、別の要件もあること。123万円超136万円以下の家族がいる場合は、異動申告が必要になること。
  • 19歳以上23歳未満の子は、給与収入136万円以下なら扶養控除等申告書、136万円超197万円以下なら特定親族特別控除申告書に記載すること
  • 23歳未満の扶養親族がいる方は、保険料控除申告書の該当欄に記入しないと特例が適用されないこと
  • 基礎控除申告書は区分が変わっているため、前年の控えを書き写さないこと
  • 改正による税額の減少は、原則として12月の年末調整で精算されること
  • 還付の有無や金額は、年間の給与額や源泉徴収額、各種控除によって異なること
  • 12月分の源泉所得税から差し引ききれない分は翌月以後に充当され、納期の特例を受けている場合は7〜12月分が対象になること
  • 給与所得控除の最低保障額や扶養親族等の所得要件の見直しは、令和9年度分(2027年6月からの特別徴収)以後の個人住民税に反映されること(所得税の基礎控除や生命保険料控除の引上げが、そのまま住民税に適用されるわけではない)

参考:国税庁『年末調整を受ける際の注意事項』

4. 社内スケジュールの策定

【10〜11月】申告書の配布・回収と周知
改正後の様式で申告書を配布し、変更点を従業員に周知します。回収した書類は順次確認し、不備があれば修正を依頼します。11月までの給与は改正前のまま計算します。

【12月】年末調整と還付
改正後の控除額で年末調整を行います。還付の有無や金額は、年間の給与額や源泉徴収額、各種控除によって異なります。12月分の源泉所得税から差し引ききれない分は、翌月以後の源泉所得税に充当します(納期の特例を受けている場合は、7〜12月分の源泉所得税から差し引きます)。

【2027年(令和9年)1月】納付と税額表の切替え
年末調整分の納期限は1月12日、納期の特例を受けている場合は1月20日です。1月以後の給与から、令和9年分の源泉徴収税額表を使います。

【2027年(令和9年)1月末〜2月1日】源泉徴収票の交付と法定調書の提出
従業員に源泉徴収票を交付し、2月1日までに法定調書を提出します。2027年1月以後は、市区町村に給与支払報告書を提出すれば、税務署への源泉徴収票の提出は不要になります。また、2027年(令和9年)に提出する法定調書は、種類ごとに、2025年に提出すべきであった枚数が30枚以上の場合、その種類の法定調書をe-Taxなどで提出する必要があります(2026年提出分までは100枚以上)。

参考:国税庁『令和8年分 年末調整のしかた』
参考:国税庁『令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A』
参考:国税庁『源泉徴収票のみなし提出』
参考:国税庁『源泉徴収義務者の方へ(年末調整)』


よくある質問

Q1. 新たに扶養の対象になった親族の異動申告が、12月の給与支払日までに間に合いません
年末調整を行う時までに提出があれば、その内容で年末調整を行えます。

Q2. 扶養控除等申告書に特定親族を記載していれば、特定親族特別控除申告書は不要ですか
必要です。特定親族特別控除を受けるには、扶養控除等申告書への記載の有無にかかわらず、特定親族特別控除申告書の提出が必要です。

Q3. 共働きの夫婦は、2人とも生命保険料控除の特例を受けられますか
夫婦の双方で特例の適用を受けることができます。
ただし、それぞれが実際に支払った対象保険料について控除を受けます。

Q4. 12月31日に子どもが生まれた場合も、生命保険料控除の特例の対象になりますか
対象になります。年末調整の後でも、翌年1月の源泉徴収票を交付する時までであれば、保険料控除申告書を提出してもらうことで、年末調整をやり直せます。間に合わない場合は、確定申告で対応できます。

Q5. 10月に退職した社員にも改正は適用されますか
年末調整を受けていない方には、会社の年末調整で改正は反映されません。年内に再就職し、再就職先で年末調整を受ける場合は、そこで改正後の控除が反映されます。年末調整を受けない場合は、本人が確定申告で適用を受けます。

Q6. 年末調整の後に、扶養親族の申告漏れが分かりました
翌年1月の源泉徴収票を交付する時までであれば、年末調整をやり直すことができます。間に合わない場合は、確定申告で対応できます。

参考:国税庁『令和8年分 年末調整Q&A』


まとめ

2026年(令和8年)分の年末調整は、12月に一括精算する流れは昨年と同じです。控除額と扶養の判定ラインが変わるため、申告書の確認と従業員への周知が中心になります。

従業員向けチェックリスト
□ 家族の収入と扶養の要件を確認し、新たに対象となる家族を異動申告した
□ 19歳以上23歳未満の子の収入に応じて、扶養控除等申告書か特定親族特別控除申告書に記載した
□ 23歳未満の扶養親族がいる場合、保険料控除申告書の該当欄に記入した
□ 基礎控除申告書の控除額を、改正後の区分で記載した

企業担当者向けチェックリスト
□ 給与ソフトが12月の年末調整と2027年1月以後の税額表切替えに対応しているか確認した
□ 改正後の様式で申告書を配布し、従業員に変更点を周知した
□ 改正で新たに対象となる親族の異動申告を回収した
□ 還付総額が12月分の源泉所得税(納期の特例の場合は7〜12月分)で差し引けるかを確認した
□ 納期限(1月12日、納期の特例は1月20日)と法定調書の提出期限(2月1日)を確認した

税理士法人AOIみらいでは、年末調整や給与計算に関するご相談を承っています。税務と労務の両面から、改正への対応や社内の手順の見直しをお手伝いします。判断に迷う点がございましたら、お気軽にご相談ください。

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